既存製品の性能を超える
新しい純正エンジンオイル登場
最近のクルマは省燃費性能が高く、20km/ℓなんて当たり前。普通に走って30km/ℓ近く走るクルマもあるんですから、驚きです。80年代、クルマはパワー!という時代を体験しているおじさん世代としては、10km/ℓ走るなんて夢。仲間内のチューンド・ロータリー乗りなど、下手すると3km/ℓ。極端な例ではアメリカンV8にホーリーキャブのデカいやつを組み合わせたがために、500m/ℓなんて猛者もいました。都内に住んでいるのに、新宿往復するのに一度給油しないといけない、と言ってました。
そんなチューンドカーと言えば、エンジンを保護する意味でも粘度の高いエンジンオイルを入れたものです。ところが、最近の省エネエンジンに使われているエンジンオイルは、超低粘度が主流。ちょっと前、0W-20のサラサラ度に驚いていたら、低燃費車は今では0W-16に移行しつつあるというのだからビックリです。
0W-16をはじめに採用したのはトヨタのアクア。本当に水みたいな粘度で、エンジン大丈夫?と心配になるくらい。実は、この粘度でもエンジンがちゃんと潤滑出来るように、エンジン本体側もしっかりと機構を専用に作ってあるんですね。
そのために、0W-16指定のエンジン以外にこのオイルを使うと、最悪故障する可能性があるから注意が必要なんです。燃費が良くなるんじゃないか、と考えて0W-16粘度指定以外のクルマに使用するのは、絶対にやめましょうね。
さて、ここまで低粘度となるとかなり特殊なオイルの部類。今でこそアフターマーケット品も出てきましたが、それまでは純正オイルしか用意がなかったんです。もちろん、0W-20を入れてもいいんですが粘度が上がればそれだけ燃費に影響が出るので、燃費重視派なら0W-16を入れたいところでしょう。
でも純正エンジンオイルって、性能どうなの?と思っている人もいるんじゃないでしょうか。
好き好んで純正オイルを選ぶ人は少なかったんじゃないかと思います。ところが、ちょっと状況は変わりそうです。トヨタが純正エンジンオイルを徹底的に見直して、新しい製品を発表したんです。その名も『トヨタ純正キヤッスル SN 0W-16』です。
従来も純正の0W-16があったのに、どこが違うんでしょう? 最大の相違点は、APIのSN規格を取得している点です。また、全合成油となった点も大きな違いといえるでしょう。従来製品は、APIの規格はなく、また鉱物油だったんです。
このオイル、新型カムリの登場とほぼ同時に発表になったんです。実はカムリのエンジンは新しいTNGAエンジン。新エンジンと併せて、エンジンオイルも一から見直して開発したんだそうです。
高性能な100%シンセティックオイルのベースオイルを採用することで、40℃における動粘度比較で約50%の低粘度化を図ったほか、摩擦低減効果のある添加剤を採用し摩擦係数を約1/3に低減しているそうです。
これにより、同粘度グレードで世界トップクラスの低燃費性能を実現。同粘度従来品と比べて、『SN 0W-16』は約2.5%、同時に発売が発表されたカムリのエンジン用の『SN 0W-20』は約2.0燃費性能が向上しているというから、燃費重視派にはうれしいじゃないですか。
ちなみにトヨタはこのエンジンオイルを開発するにあたって、実験室で高回転・高負荷でのエンジン耐久性試験を繰り返しおこなっただけでなく、地球百周分にもあたる、延べ走行距離400万kmの実走行テストを行ってオイル性能を評価したというのだから本気です。
今までなんとなく純正オイルはそこそこの性能、と思っていたのですが、ここまで徹底的に開発に力を入れたと聞くと、さすがはメーカー純正品!と思えてしまうから不思議です。
最近では、ターボエンジンでも低粘度オイルが採用されているんです。例えば、トヨタ・タンクのターボエンジンも0W-20指定。エンジンやターボの軸受けのことを考えると、高性能な全合成油の『SN 0W-20』を使うのが賢明でしょう。
しかも、全合成油でありながらお値段は4ℓ缶で3900円とお財布に優しい点も立派。今後、トヨタディーラーでオイル交換をするクルマが増えるかもしれませんで。
小さい頃からのクルマ好きが嵩じて、学生時代よりカー雑誌の編集部員に。カー雑誌を多く出版する㈱三栄書房で、モーターファン、オプション、ゲンロク、カーグッズマガジン、ニューモデルマガジンX等、多くの雑誌編集に携わり、現在はフリーランスライターとして活動中。クルマはもちろん、カー用品も大好きで積極的にテストもしている。
また、ミニカー、プラモデル、スロットカーなどクルマ系のオモチャも
ネコと同じくらい大好きだ。