日本でもインド生産モデルが輸入販売されているのがスズキ・バレーノ。本国インドでは2015年10月にデビュー。それから間もなく2年が経とうとしているが、その人気は衰えるところを知らないとのことである。
かつての日本や、いまの中国などでもそうなのだが、だんだん生活が豊かになると、マイカーもより大きくてゴージャスなものへと変わっていくのが一般的ともいえるのだが、インド市場のユニークなところは、たとえ所得が豊かになってもスイフトやタタなどのコンパクトカーに乗り継いでいくというのである。デリーで地元民に聞いたら、“見てわかるだろ、デリー市内の道は狭すぎるからだ”といっていた。
さらに税制などもあるのだが、スイフトが先駆者ともいえる全長4メートル未満のセダンを中心にコンパクトカーが圧倒的に多く売れている。そのような事情を背景にバレーノは幅こそ日本でいう5ナンバーサイズを超えているが、全長は4メートル未満となり、さらにプレミアムイメージも強調されているのが人気の秘密といえよう。スズキブランドの上級車専売店“NEXA”店で扱っているのも功を奏しているようだ。
話をインドネシアに戻すと、まずインドネシアでは奢侈(しゃし:ぜいたく)税という税金がハッチバック車は10%なのに、セダンは30%となるので、インドネシアでセダンといえば、タクシーか一部の高級車ばかりとなっている。
現状では大家族で生活する形態がメインとなっており、多人数乗車可能な3列シートを持つMPVの人気が高いが、大都市を中心に核家族化も進み、さらに所得格差も広がりを見せているようなので、プレミアム・コンパクト・ハッチバッックとなるバレーノが受け入れられる環境はインドネシアにできつつあるものと判断され今回導入に踏み切ったようだ。
日本ではバレーノの全幅は3ナンバーサイズなのに、価格帯はフィット並みというポジションはなかなか理解が得られないだが、そこはインドで成功を収め、ASEAN地域でも強みを見せるインドならではのプロダクトなので、インドやインドネシアで見れば、“アリかも”となるのである。
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1967年北海道生まれ。新車ディーラーセールスマン、新車購入情報誌編集長などを経て現在フリー編集記者として活躍中。趣味は路線バスの“乗りバス”とアメリカ旅行そしてネコウォッチング。