今回のインドネシアショーの最大の目玉ともいえるのが、三菱がワールドプレミアを行った、次世代クロスオーバーMPVの“エクスパンダー”である。大家族主義のインドネシアでは、小型でありながら3列シートを持ち、さらには洪水時なども考慮した腰高なMPV(多目的車)が好まれ、販売の中心を担っているといってよい。
三菱がワールドプレミアした三菱エクスパンダー
三菱はASEAN地域で人気の高い、シャシーフレームタイプのSUV“パジェロスポーツ”のイメージをエクスパンダーに与え、単なるMPVではなく、SUVとのクロスオーバーMPVと銘打って発表したのである。
一般来場者であふれる三菱ブース
プレスデーでの注目度も抜群であったが、一般公開初日の三菱ブースのにぎわいはプレスデーのレベルを超え、三菱ブースはまさに“ひとだらけ”になっていた。インドネシアの消費者の心をつかんだといってもいいエクスパンダーはインドネシアのみならず、ASEAN地域で人気モデルとなるのはほぼ間違いないが、気になることがひとつある。それはモノコック仕様であること。首都ジャカルタ及び近郊などで乗る分には、問題ないが。全インドネシアで見れば、道路環境はけっして良いとはいえない。消費者のなかには新車購入を検討するときに、“モノコックか否か”をチェックし、シャシーフレームを持つモデルが選ばれることもまだまだ多いと聞く。
エクスパンダーの属するクラスは、キャラクターは少し異なれど、トヨタ・アヴァンザ(兄弟車ダイハツ・セニア)、ホンダ・モビリオ、スズキ・エルティガなどがあり、販売激戦区ともいわれている。そのなかでダントツに売れているのが、トヨタ・アヴァンザ(ダイハツ・セニア)である。法人へのフリート販売も目立つのだが、一般消費者だけでなく、法人ユースでも高い人気の秘密は駆動方式がFRで、しかもビルトインラダーフレーム構造を採用しているところにある。要はタフなモデルがやはり注目されるのである。
その点ではショー会場で人気の高さを見せたエクスパンダーだが、大都市のみという地域限定人気車になりかねないか心配が残る。
今回のショーで三菱ブースとほぼ“はす向かい”にブースを構えたのが、中国の上海通用五菱汽車(ウーリン)である。ウーリンはインドネシアで現地生産している、エクスパンダーと同クラスになるSUV風に仕立てにしたMPV、“コンフェロS”を大々的に展示していた。このコンフェロSはエンジン縦置きのFRでしかもフレームボディを採用している。ASEANで圧倒的なブランド力を見せる三菱と、新興勢力の中国メーカーの“名もなきモデル”では比較すること自体馬鹿げているというひともいるが、ウーリンブースも三菱ブースに負けないほど、ひとが集まっていた。
ウーリンのコンフェロS
時期を同じくして登場したこの2台、ウーリンの“仕掛け”次第では、この2車の販売動向はなかなか興味深いものとなりそうである。
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1967年北海道生まれ。新車ディーラーセールスマン、新車購入情報誌編集長などを経て現在フリー編集記者として活躍中。趣味は路線バスの“乗りバス”とアメリカ旅行そしてネコウォッチング。