インドネシアショーのダイハツブースで見かけたのは、今年1月に開催された東京オートサロンに出品した、トールとムーヴキャンバスのドレスアップモデル。朝一番でダイハツブースへ行くと、この2台にはまだ布がかけられており、それでもトールのような形がわかったので、“インドネシア向けのトールが登場するのか”と期待していたのだが、アンベールされると、それは前述したとおりに東京オートサロン出品車であったのだ。
しかしコンコース近くにこの2台が置いてあることから考えても、ムーヴキャンバスは軽自動車なので、そのままインドネシア市場へ導入するのは厳しいとしても、トールに関しては、インドネシア市場導入を視野に入れての来場者の反応をリサーチするために出展されたとも考えられる。ここ数年ダイハツは毎回日本の軽自動車を参考出品しているので、今回のムーヴキャンバス含め、来場者の反応などを見ているのは間違いないようだ。
ダイハツは5月にミラ・イースのフルモデルチェンジを行った。この新型ミラ・イースはダイハツの新世代プラットフォームともいえる“DNGA”の原点を確立したモデルとされており(DNGAではない)、先代の“安価で燃費のいい軽自動車”というだけでなく、クルマの基本性能を磨き上げたモデルとして高い評価を受けている。
ある事情通はこの新型ミラ・イースについて、“残念ながら日本専売の軽自動車としてだけなら、ここまで基本性能の磨きこみはしなかっただろう。やはり新型ミラ・イースをベースに1ℓエンジンなどを搭載したASEAN市場向けのコンパクトカーの開発も当然コミでの開発であったはずである”としている。
話を戻すが、トールがASEAN市場までを視野に入れて開発されたかは定かではない。しかし、日本の自動車市場というものは、日本の人口減少化に伴い市場規模は縮小していくことはあれど、拡大することはない。このような周辺環境を考えれば、日本市場専売モデルとしてのみ開発するのはコスト維持の面でもかなり厳しい、かといって先進国市場までも視野に入れた新車開発では、小型車ではコストがかかりすぎる。そこでASEAN市場での販売も視野に入れた開発というのは今後さらに顕著になっていくのは間違いないだろう。
“ASEAN市場も視野に”などというと、ネガティブに捉えるひとも多いかもしれない。しかし、ASEAN諸国の道路環境は日本に比べれば、都市部ですら劣悪なものとなっている。そのなかで、ハードに使われることも想定して開発されるのだから、ASEAN市場も視野に入れた車両開発は、日本市場専売のみを視野に入れた車両開発よりは、耐久性能などを中心に磨き上げられることになり、個人的にはポジティブに受け入れられるものと考えている。
1967年北海道生まれ。新車ディーラーセールスマン、新車購入情報誌編集長などを経て現在フリー編集記者として活躍中。趣味は路線バスの“乗りバス”とアメリカ旅行そしてネコウォッチング。