こんにちは。小島です。
今回のコラムは、タコ足を製作してもらったときのお話です。RBエンジンに積み替えてからずっとフジツボ製タコ足を使っていました。が、低い車高のせいでちょいちょいぶつけがちなので交換したいなぁ…とか思いはじめたものの、RBエンジンといえばターボチューンのこの世の中、世に存在するNA用のタコ足をフジツボ以外で探すとなると、オーテックR32のRB26 NA用とかいうさらにマニアックなモノしか存在せず…。これはもう腹をくくってワンオフするか……と思い至った次第でございます。
さてワンオフというのはその道のスペシャリストが手間暇かけてこしらえるモノですから、それなりのお金がかかるもの。だからと言ってただ大金払って何でもかんでもお任せで作ってもらうのは芸がないなと思いまして、自分なりに理想のタコ足を考えてみて、それをプロにぶつけてみましょうと、そんなすじ道を思い描いてみたのでした。
タコ足といえばとかく音を優先されがちですが、そもそもエグゾーストシステムというのは、エンジンから効率よく排気ガスを流すための部品。ついでにいい音になっちゃったらいいなー、ぐらいのスタンスで自分なりに考えたタコ足の条件は、
・タコ足の基本、等長で
・排気干渉を利用しやすい6→1集合で
・6→1集合部を点火順序で並べる
…というのが理想ではないかなという結論に至りました。
等長については多くを説明しなくてもなんとなく素人でも良さげな感じが想像できるので説明は省略するとして、排気干渉を利用するっていうのはどういうことか、流体力学の単位を落として留年した俺様がえらそうに解説してみようと思います。
さて、タコ足の働きを2気筒のエンジンで考えてみましょう。2気筒のエンジンは交互に爆発しています。片方の気筒(1番とします)の排気バルブから出た排気ガスは勢いがあるので、そのまま集合部分を通って出口に向かって流れます。もう片方の気筒(2番とします)では排気バルブが閉じているので、エキマニの中はほとんど流速がありません。
1番の排気ガスにひっぱられるように2番が負圧になります
2番のエキマニにある気体は1番の排気ガスの流れに引っ張られるように流れようとしますが、排気バルブはまだ閉じてるので2番のエキマニの圧力は下がることになります。次は2番が排気する番です。1番から出た排気ガスのおかげで2番のエキマニは圧力が下がってる(負圧になる)ので、そこへ排気バルブを開けると勢いよく排気ガスが流れ出して、燃焼室の燃えカスが根こそぎ吸い出される!
……はずなんですが、現実はこんなにうまいこといかず、1番の排気ガスが2番のエキマニに流れ込んで、逆に排気の邪魔をしちゃったりすることもあるんです。
特に自然吸気エンジンでは、混合気が強制的に送り込まれるわけではないので、少しでも多くの混合気でシリンダーの中を満たしてあげるためには、いかに燃焼室の排気ガスをスムーズに追い出してあげるかがポイントになります。タコ足の性能というのは、この効果の良しあしで決まるんですね。論より証拠、タコ足のこと調べててYouTubeで見つけたいい実験動画があるので紹介させてもらいます。
ちゃんと考えて作られたタコ足は1ヵ所に吹き込むと、他の気筒がすべて負圧になるのがよく分かります。すばらしい。この原理はけっこう身近なところにも応用されてて、ブロワーバキュームと呼ばれる圧縮空気を利用する掃除機もこの仕組みを応用しています。
私のハコスカは6気筒なので、この吸出し効果を最大限に利用するために排気ガスが出たらすぐ隣のパイプから次の排気ガスが出てきてほしいので、6→1集合部分を点火順序に並べることも理解できますね。バイクの集合管で有名なヨシムラ・サイクロンの6気筒版みたいなイメージです。
というわけで、抜けのいいタコ足がどういうものか流体力学が苦手な私もなんとなく分かってきちゃったもんだから、ムラムラしてどうにも我慢できずにどんなレイアウトになるのか、自分なりにパソコンで作ってみることにしました。
じゃーん。というわけでこんなのを前職の仕事の合間にしれっとこしらえてみました。集合部分は6気筒エンジンの点火順序、1→5→3→6→2→4の順番で繋いでいます。
一見それっぽくて超かっこいいんですが、各部の寸法は写真とかからこんなもんかな?…となんとなく決めたインチキ寸法となっております。しかもこれ、パイプ同士が干渉しまくりで成り立ってないし、長さもイマイチ等長じゃないし…。特に4番のパイプは、長さを稼ぎたくてもどこにも逃げ場がなくて一番ネックになりそうです。
ま、とりあえずこれはこれで、それっぽい絵があったほうが打ち合わせもしやすくなるし、スキップ交じりに製作をお願いするショップさんに赴くのでした。(ただし、このレイアウトはあっさりボツになります)
タコ足制作をお願いすることに決めたお店は、先に紹介した動画を撮った人でもある「S&Aオートクリエイト」さん。社長の考え方、こだわり方にものすごく共感できたので、ほとんど飛び込みのような形でクルマを預けることになりました。
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免許を取ってからずっとハコスカ乗ってる人。足車はジムニーだが、これもジムニーばかり3台も乗り継いでるという重篤な症状を持つ。ハコスカとジムニーだけという偏った車歴ながら、スポーツカーから働くクルマまで、クルマ全般が大好きなおじさん。1977年生まれ、神奈川県出身。