フランクフルトショーといえば、メルセデスベンツ、BMW,フォルクスワーゲン(以下VW)の各グループが、展示面積の広い展示棟をそれぞれ1棟ずつまるごと借り上げて展示ブースを設けるのが名物。
前回までアウディが中庭のような場所に特設ブースを設けるなどして、VW村(VWグループ棟)には入っていなかったが、今回からはVW村に“同居”しているので、その意味ではやや展示面積は縮小ともいえるのだが、その展示面積の広さはハンパではない。
展示面積だけでなく、プレスカンファレンス時に発表するワールドプレミアモデルも、これでもかという数を投入してくる。会場面積全体も広すぎるので移動時間もかかってしまうので、ドイツ系だけでなく、すべてのプレスカンファレンスをハシゴすることはほぼ不可能。筆者はスケジュール調整してVWのプレスカンファレンスに参加することができた。
VWグループすべてが1棟内にあるといっても、プレスカンファレンスは個別となるので、ブランドごとにプレスカンファレンスがある限りは、なんらかのニューモデルが発表されている。これではショーに出展する、日系などドイツ系以外のブランドはたまったものではない。仕方のないことだが、ドイツ系は地元開催でもあるので、スケールの大きい展示内容と多数のワールドプレミアモデルを発表してくるので、プレスカンファレンス開始30分前に会場に行っても、座る場所はおろか、満足に撮影する場所すら確保が難しい。しかしドイツ系以外のブランドでは、明らかに参加するメディア関係者の集まりが悪く、開始ギリギリになってようやく席が埋まるような感じになっている。移動時間などの物理的問題と話題性を考えれば、ドイツ系の扱いが最優先となるのは仕方がないが、このような状況では出展を取りやめるブランドが出てきても仕方がないのかもしれない。
そしてフランクフルトショーの直後に東京モーターショーが開催される。絶対的な展示面積ではフランクフルトショーには及ばないが、それでも日系ブランドが広い展示面積を有するところはフランクフルトショーと同じ。しかしこれはあくまでも私見となるのだが、展示やプレスカンファレンスの内容では、日系とそれ以外のブランドでは、大差がないというよりは、いわゆる輸入車ブランドのほうが、ワールドプレミアモデルで話題性が高いものも多い。
何を言いたいかというと、面積などに恵まれた日系ブランドが自国開催という立場もあるのに、魅力あるブース作りや、プレスカンファレンスでの高い情報発信が十分にできていないのではないかと感じているのである。フランクフルトショーにおけるドイツ系ブランドは少々やりすぎ感はあるものの、その姿勢は強く見習う必要があるのではなかろうか。とくに高い飛行機代を払って極東のオートショーまで足を運んできた海外メディアに対して十分な“お土産”を、東京モーターショーは渡せていないのも、ショーステイタスが地盤沈下していく、大きな要因のひとつだとフランクフルトに来て、改めて強く感じた。
大きな吹き抜けのある、通称“ベンツタワー”こと、メルセデスベンツグループの展示棟内。
1967年北海道生まれ。新車ディーラーセールスマン、新車購入情報誌編集長などを経て現在フリー編集記者として活躍中。趣味は路線バスの“乗りバス”とアメリカ旅行そしてネコウォッチング。