世界のオートショーをまわると、新車に混じって懐かしい“旧車”が展示されることが最近はよく目立つ。今回のフランクフルトショーも“70年代”と銘打って、当時の話題の名車を多数まとめて展示してあるコーナーがあったり、写真のようにVW(フォルクスワーゲン)ポロのGTIがワールドプレミアされたタイミングに合わせて、VWでは自社ブースにゴルフⅠ(初代)のGTIモデルが展示されていた。しかもドアロックも開いていて乗り降り自由という大判振る舞い。筆者も独特の“ガチャ”というドア開閉音を楽しむために何度もドアの開け閉めをしてしまった。
大学3年の時、それまでしたアルバイト代の貯金が結構貯まっていた。そこで中古車を買おうと、当時はまだ東京ドームではなく、後楽園球場だった場所で行われた中古車フェアに出かけたときに、GTIではないが、モナコブルーのゴルフⅠのビッグテールに出会い一目ぼれしてしまった。中古車情報誌などでモナコブルーのゴルフⅠを探すが、当時の人気色であり同年式同型車のなかでも販売価格が飛びぬけて高く、とても手の出せる状態ではなかった。結局悩んだ末に中古車購入は諦めて、もうひとつの夢だったアメリカへ長期間のひとり旅を春休みに合わせて行くことにしたのを思い出した。
なぜこんな“オジサンの思い出”を語ったかというと、モーターショーの会場内では意外なほど旧車の展示が受ける。筆者の世代はそれこそ、食事をすべてカップラーメンにして高級スポーツカーを購入したなどという話は当たり前のようにあった時代。いまとは異なり、レンタカーでデートに行くことなどは絶対できない時代でもあった。そこにはオジサンの数だけ思い出があるのだ。
そうなると、モーターショー会場で旧車のウケがいいということは、来場者の年齢層も高まっているのだろうか? はっきりした統計は見たことはないが、筆者の感覚でいえば、先進国のモーターショーでは、年配の来場者が目立つような気がする。
先進国を中心に、若者のクルマ離れは深刻さを増している(日本だけの問題ではないのだ)。そのなかで、わざわざ若者が集ってお金を払ってクルマ(とくに新車)を見に行くという図式はなかなか成立しにくくなっているのが現実のようだ。かつて日本でもモーターショーはデートコースにもなり得たが、そのパターンは新興国でのみ通用している。それでも富裕層を中心に新興国でも若者のクルマ離れは進んでいるとも聞く。
来場したオジサンたちが、展示してある旧車で盛り上がる(もちろん最新モデルも興味津々で見ている)。モーターショーも“オワコン”の道を突き進んでいるのかと悩んでしまった。
ショー会場に展示してあった、ゴルフⅠのGT。最新のポロはすでに軽くボディサイズを超えている。
1967年北海道生まれ。新車ディーラーセールスマン、新車購入情報誌編集長などを経て現在フリー編集記者として活躍中。趣味は路線バスの“乗りバス”とアメリカ旅行そしてネコウォッチング。