世界初のドリフト世界選手権が終了いたしました!
結果としては初代世界チャンピオンは川畑真人選手でした。土曜日Leg1優勝、日曜日Leg2優勝はロシアのアルカーシャ選手。決勝戦で川畑選手はやぶれ2位でした。また、3位決定戦は横井昌志選手vsこれまたロシアのゴーチャ選手となり、3位の座はゴーチャ選手が勝ち取って行きました。そう、今大会はロシアン旋風が巻き起こりました…
今回のハイライトは3位決定戦の時にホットピットエリアで起きていたのです。
たまたま今回の私の居た位置がやぐらの高い所で、ロシア選手の2人のピットの位置のすぐそばでしたから,そのやり取りを全て目の当りに出来たのです。この出来事を伝えずに、今回のロシアン旋風もLeg2優勝のアルカーシャ選手の凄さも語ることは出来ないのです!
では、3位決定戦の時に何があったのか…??
戦いは横井選手vsゴーチャ選手。もちろん、そう簡単に両者譲らず戦いはサドンデスとなりました。しかし、サドンデスに向けてなかなかピットで作業が進まないゴーチャ陣営。どうやらタイヤを使い切っていて履くタイヤが無い状態になっていました。実はここまでも中古タイヤをだましだまし使い続け、そして、遂に使えるタイヤがなくなってしまったと…
これにはまた伏線がありまして、今回のチームTOYOは5台。藤野秀之選手・川畑真人選手・ポン選手・アルカーシャ選手・ゴーチャ選手でした。そして今回TOYOは秘密兵器(?)としてR888Rの新サイズ19インチを投入しました。しかし、使うのは藤野選手・川畑選手・ポン選手の3名。ロシアの2名は従来の18インチでいくことに。
当然18インチはストック本数も少なかったそうです。それを分かっていたからこそだましだまし使い続けていたのですが…タイヤサービスも底をついてしまいました。さぁ、どうするのか? 見守っていると、突然その戦いのあとに決勝戦を行う為に既に準備を終えていたアルカーシャ選手のマシーンがジャッキアップされリヤタイヤを外し出しました。もちろん、アルカーシャ選手も決勝戦の為の最後の新品タイヤなのですが、とにかくそれを使ってサドンデスに行って来いと…と、同時に、見たことのある青いホイールを別のところからもって来てアルカーシャ陣営は履けるかどうかをチェックし出しました。
そう、ポンちゃんのZ用の19インチ新品です。そして何とかスペーサーも外し、車高をチョット調整して履けることを確認!! これでゴーチャ選手を送り出すことに決めました!!!
アルカーシャ選手も前まで乗り出して見守るサドンデスが始まりました。1本目はドカンドカン体当たりして来るゴーチャ選手を、このぐらいで廻るもんかと男気溢れる走りで横井選手が最後まで踏ん張ります(感動MAX)… が、2ランクもって行かれました。こうなると2.5ランク狙いの走りを強いられる横井選手は当然それ以上に接近した食い込みを見せ、このまま行ききるか?と思わせた最後のコーナーで… 行き過ぎてしまいましたー!! ゴーチャ選手もたまらずスピン!
勝負あり。見事にゴーチャ選手が3位表彰台をもぎ取ったのです。そしてその結果をしっかりと確認(小さくガッツポーズしていました)してアルカーシャ選手がクルマに乗り込みました。
もちろんぶっつけです。18インチと19インチではまったく特性が違います。セッティングも同じままでは走れないことも知っています。それでも賭けに出たのです。そもそも、もしサドンデスになっていたら自分も18インチは無かったのですから、この19インチにかけるしか無い。そして、さらに青いホイールの新品の19インチがもう1セット、ピットにはしっかりと用意されています。
まずはウォーミングアップで確認です。内圧を調整してまずは1本目。もちろん、気合いが入りノッている川畑選手も渾身の一発で逃げに掛かります。そう簡単には食い込めないアルカーシャ選手。しかしこれが初めて履くタイヤなのか?そのトラクションの良さを瞬時に使いきって少しでも川畑選手に寄せて行き、何とか0.5ランク奪取!! 上出来です。そして入れ替え。当然ビタビタで狙って来るであろう川畑選手は飛び込みを押さえて2コーナーから食い込んで来る冷静な走り方。それでも、その食い込み方は尋常じゃない距離。そしてSEC3の飛び込みへ… さらに行こうとしたのでしょう、ノリノリになった川畑選手がやり過ぎの飛び込み? いゃ、ホントはアルカーシャ選手もいつもとは違った振り出し(少し角度がなかった)になっていました。その為に川畑選手の右テールがきれいにアルカーシャ選手の左テールをヒット! やり過ぎをとられ、ここで勝負あり!! 何とアルカーシャ選手が優勝したのでした。
結果が出た時の喜び様は、まわりのメカニックやスタッフ、そして、沢山来ていたロシアの応援団の方がハンパありませんでした。アルカーシャ選手ももちろん喜んではいましたが、なんだかとにかくまわりの人達の喜び様がハンパ無い状態が印象的でした。
表彰式も終わり、記者会見でアルカーシャ選手がこう言ったそうです。
「今回の優勝はワタシ1人の優勝ではありません。チームTOYOの優勝です。このチームは世界一のチームです。そしてこのチームにいることを誇りに思います」と。
何と素晴らしいコメントではないですか。何と素晴らしい選手ではないですか。
これぞプロフェッショナル! 出来ますか? 言えますか? 日本のD1選手にもホント学んで欲しいプロフェッショナル精神ですね。
初めての大会で相当ゴタゴタがありました。観に来られた方にも選手やチームの方々にもご迷惑をおかけいたしました。それでもこんな戦いや裏の事情があり、また少し前向きに頑張れる糧となったと思います。
またいつか、是非どこかで世界選手権ドリフト見てみたいと思うようになりました。
D1グランプリを始めとするクルマ系イベントのMCでおなじみ、愛称は「マナピー(マナP)」。元レーシングドライバー。引退後はMC業やレビュアー業だけではなく、バイナルグラフィック専門会社「MSR」代表としてデザイン業を行っている。1963年3月20日生まれ、東京世田谷区出身、途中2年間ブラジルサンパウロ在住そして現在、山梨県河口湖在住。