FIA IDCからそのまま、今度はお台場でD1-GP Rd.7最終戦&EXB戦でした。
今回はシリーズランキングTOP24だけでの戦いなので、金曜日はいつものような予選はなく練習走行のみ。土曜日の最終戦は単走ファイナルから始まることに・・・が、天気は最悪。夜からの雨がまだやまず、完全ウェットでの戦いかと思いきや、最終的には晴れ渡り無事にシリーズ戦は終了! チャンピオンは藤野秀之選手が初の栄冠を勝ち取りました。しかし、天気のせいもあってか、お客さんが満員じゃなかったのが気がかりでした…。
そして、日曜日は特別戦 “ファイナルバトル in お台場”。こちらは朝から暑いくらい天気が良くスタンドも満員状態!!最後までD1らしいギリギリのバトルの連続で、畑中真吾選手が優勝! D1イベントとしても初めての優勝で、いつもとは違った雰囲気の表彰式となり最後を締めくくるにはとっても雰囲気の良いラストステージとなりました…が、やはりこの日も気がかりなことは続いておりまして…。
気がかりなこと…??
マシーン性能や運転レベルは前の週のFIA IDCを観ていても思いましたが、確かに日本は相当高いレベルにあると思います。しかし、運転レベルということだけで言えば今回のTOP24はそんなに差がないかもしれません。誰が勝ってもおかしくはないと思います。しかし、マシーンの個体差はどうでしょうか? 先ほどマシーン性能は世界でもTOPレベルと書きましたが、それは数台かな?
今回の24台をレベル分けすれば3グループぐらいに分けられるかな?
まず1番ズバ抜けたレベルのグループ1は齋藤ダイゴ選手のコルベット1台のみ。これは重量(1,080kg)とエンジンパワー(800ps)とタイヤ(WANLIの305サイズ)で決まります。もちろんこれは全て規則に沿って作り上げられた完全合法マシーンです。とにかく、コルベットのGT-3仕様に目に付け、ベースとしたところがすごいところで,それを更にドリフト仕様に完全に作り換えたことも、そう簡単ではなくので凄い。こんなマシーンを普通のチームは作れません(当然お金も掛かるのです)。
次の2グループ目が35GT-Rでしょうか。とにかく桁外れにパワーがあり(1,000ps前後)、それでいてパワーに余裕がある為そうそう壊れることはありません。更に重量も軽く作ってます(1,245kg)。また、TOYOタイヤR888Rの285/35-20は最強タイヤの1つでしょう。
そして3つめのグループがそれ以外全部、といっても過言ではないかな?パワーはあるけど重かったり、軽いけどパワーがなかったり、そもそも太いタイヤ(285サイズ)を履けなかったり、クルマが古く(20年前のクルマ)もう酷使するには辛い? なんてのも多いのです。
つまり、世界的にみてもTOPレベルというのは最初の2グループのマシーン。あとは世界のトップレベルと同じぐらいか少し劣るぐらい? でしょうか。で、何故そうなってしまったのか? ということですが,これは完全に今のD1の競技ルールと車両規定がそうさせてしまったのですね。
追走で勝つ為にはゼロヨン張りの加速力。その為に無茶苦茶パワーを上げ、それでいて市販ラジアルをグリップさせるには、超ハイグリップ(Sタイヤ以上)方向でタイヤを制作し、これまたゼロヨン張りに超低圧(いまでは0.4kぐらい)でタイヤをつぶしてトラクションを高め、さらに、横を向けるにはパワーでねじ込む為にとにかくハイパワー方向となるのです。またどちらの特性をあげる為にもとにかく車重は軽ければ軽い程良いとされ、かなりボディーは切り刻まれ、更にドライカーボン含め軽量材質が求められてコストの増加が半端ないことに…
こんな方向性でのクルマ作りがここ数年過激化して来ました。もちろんワンメイクでもないしそれぞれマシーンの特性があって違いがあって、その中で腕で競い合えれば良いのですが、どうにも今の競技方法ですとスタートダッシュが優れているクルマが有利となっている様です。そう先行逃げ切りのパターンですね。とにかく先行で思いっきり引き離し自分の単走での走りを貫く。最低でもイーブン。更には追い車が追っかけモードになってしまって角度がうすくなり、逆に0.5アドバンテージを前走者にとられるケースも少なくありません。そして入れ替えて、とにかくビッタリスタートからついて行けますから、1コーナー飛び込みではそんなにリスクを背負わずにその先きからパワーでねじ込んで行っては離れ、ねじ込んで行っては離れを繰り返して、やはり最低0.5ランクは取れちゃうもので楽々勝ててしまうのです。とにかく、スタートで出遅れしまうと後追いとしてのアドバンテージがとれないものですからスタートダッシュがとにかく大事! ということで、追走のほとんでフライングによるやり直し。もちろん後追いのクルマがどうしてもフライングしてしまう。今はルールで前走車じゃなければフライングはとらないのでとにかくギリギリ見切り発車なのだ! このスタート方法を考えなくてはならないのですが、今回の特設の様な短いストレートのところは何にしても難しい。ローリングスタートみたいにしたいのですが、とにかくスペースが無い。また先行車をシケイン通してなんてやっるほどのストレートの距離も無い。まずはとにかくこれが問題!!
そして、もう1つ気がかりと言っていたのは…そう、壊れ過ぎ!! このようなスタート方法だったりタイヤを超低圧でパワーで押し込むドリフト方法でのっているものだから駆動系に負担が掛かり過ぎなのです。コルベットなんかもうもろ刃の剣。今回も2日間とも駆動系トラブルで敗退してます。もしこのトラブルが無かったら今期は途中から連戦連勝だったかも? ですが、とにかく良い戦いがトラブルで決着がつくと言う始末! これは余りに多過ぎて興ざめかな? タイヤも超低圧にし過ぎてリムから外れてパンク状態になってしまってまともに走れないというのも同じこと。
しかし、これは競技ルールと車両規定からなったことで、もちろん良いところもある訳なので一概に全て見直す訳ではないのですが…まずはスタート方法とタイヤの内圧は来年に向けて即刻検討課題。そして、タイヤと重量のパランスもいよいよ見直しの課題となります。つまり重量に対してタイヤサイズを決めるということになるのかな? 今まで色々な問題から手を入れていなかった規定がいよいよ来年に向けては見直されることとなると思います。そして少しでも性能差が拮抗した状態で腕だけでドリフトが争われる様に見直して行くこととなると思います。とはいえ、もちろん世界No.1ドリフトを目指しているD1-GP、速さや凄さや迫力は欠けることなくシビレル追走が観られる様、考えて行くこととなります…期待していて下さい。
D1グランプリを始めとするクルマ系イベントのMCでおなじみ、愛称は「マナピー(マナP)」。元レーシングドライバー。引退後はMC業やレビュアー業だけではなく、バイナルグラフィック専門会社「MSR」代表としてデザイン業を行っている。1963年3月20日生まれ、東京世田谷区出身、途中2年間ブラジルサンパウロ在住そして現在、山梨県河口湖在住。