私はタイのスーパーGTを取材していたので、同じ日に行われたF1日本GPは当然見ていませんし、それはいいですけどサポートレースのスーパーFJによる「ドリームカップ」が、大いに盛り上がったみたいです。ちょっと悔しい(笑)。というわけで、ネット的には旧聞にも属しますが、優勝を飾った岡本大地選手にインタビューしてみました。
——どうでした、F1ドライバーも上がるポディウムから見た風景は?
岡本「いつもと違って、お客さんも多かったですし、みんながみんな乗れる表彰台ではないというのを噛み締めながら。貴重な経験しているな、という思いでしたね。」
——なるほど。では、時間を戻しますが、30分1セッションのフリー走行は、大変な状況だったみたいですね。予選も微妙なコンディションだったと聞きましたが。
岡本「金曜日のフリー走行は雨が本当にすごくて、フォーミュラカーが走れるようなコンディションではなかったんです。赤旗も2回出て、30分のうちに4、5周しか走れなかった感じでしたね。予選もウェットで、微妙なコンディションで、始まる前に雨がパラパラっときたので、ほぼ全車ウェットタイヤだったと思うんですけど、僕もそれまで迷っていたんですが、もうこれはウェットだな、と話して。ウェットタイヤでまず、スタートして行きました」
——だけど、途中からドライタイヤを入れたとか?
岡本「赤旗1回目の後です、ドライタイヤを入れたのは。アウトラップをずらして予選に行ったんですよ、前のクルマにひっかりたくなかったので。半周ぐらい離して出て行ったんですが、その1周を終える前に赤旗が出て、途中で東コースを走るじゃないですか? その時にこれはドライで行けると判断して、ピットに戻ると同時にすぐドライタイヤに履き替えて。西コースは全然ウェットだったんですけど、これは予選の後半に乾くと判断して、よぉしと」
——ところが、もう一度、赤旗が出てしまって……。
岡本「もう、『最悪!』って感じで、路面も乾かないし、タイヤも温まらないし。その時が20番手ぐらいだったらしいんですよ、後で聞いたら。だから、『この予選終わったな……』と2回目の赤旗の後、思ったんですが(笑)。だから、残り8分間のいちばん最後の周にタイムが出ました。僕を合わせて3人ぐらいドライタイヤ履いたようなんですが、上位陣はみんなウェットでした」
——そうしてポールポジション獲得。迎えた決勝は完全にドライで、スタートでトップに立ったようですね。なのに、2周目のデグナーで……。
岡本「決勝のスタートは普通に、決まったという感じでもなく、ミスったっていう感じでもなく、普通のスタートでした。2番手(小倉祥太)が遅れて、4番手から名取(鉄平)くんが上がってきました。差はあんまりつけられなかったんですけど、1周目の130Rでスリップつけられているのに、次の周のデグナーに入る直前にミラー見たらじわじわ開いていたので、『これはミスせず走っていたら、行ける』と思っていた途端に(笑)。プッシュし続ける気持ちで走らないとダメかもしれませんね」
——スピンはしたんだけど、5番手で戻れたと。
岡本「スピンはしたんですが、そのままの慣性で1回転、きれいに回ってくれたので(笑)」
——その後、トップを走っていた名取選手と山内飛侑選手が、スプーンでからんで……。
岡本「僕も1台を抜いていて、あとはトップに立った小倉選手だけ。徐々に迫っていって、6周目の130Rで、アウトから抜くことができました」
——引き離すまでには至らなかったようですね?
岡本「最後、あんまりギリギリ感は、僕は感じていなかったんですが、差はなかったんですが、スリップ入られつつなら、あんなもんかなという感じはしましたね」
——今、振り返るとどんな印象のレースでしたか?
岡本「レース自体は、今シーズンいちばん最悪なレースだったな、と(苦笑)。12月の日本一決定戦で、同じことしていたら勝てないかなと、今反省中です」
——まぁ、確かに岡山シリーズでは、ずっとポール・トゥ・ウィン。バトルらしいバトルはしていませんからね。
岡本「そうなんです。バーチャルシミュレーター上では、バトルもいっぱいやっているんですが、それを実際のリアルでやるのは、今シーズンなかなかなかったことなので、そういう意味では良かったかもしれませんね。いい勉強にもなりましたし、結果もついてきたので良かったですけれど」
——残すは先の言葉にもあった、日本一決定戦のみ。誰がライバルになりそうですか?
岡本「小倉くんのS字がすごく速くて、S字はあのスピードに近づいていかないといけないですね。あと名取くんと飛侑くん、ファステスト獲った(太田)格之進くんとか、そのへんがライバルになるのかな、と思っています」
——聞いているだけで、見られなかったのが残念なレースです(笑)。日本一決定戦も期待しています。
岡本「ありがとうございます!」
カートレースの経験はあるみたいですが、そう華々しい実績ではなく、むしろシミュレーターでの練習を重ねてスーパーFJに、18歳になるとすぐ昨年の途中からデビューしてスポット参戦。このところカートレースで活躍して限定Aライセンスで出場していた、いわばエリートドライバーが大活躍という印象のスーパーFJですが、そういう意味では岡本選手は「雑草」系なんですね。自力で這い上がってきた感じ、昔のFJ1600の頃を彷彿させるようで、私なんかはむしろ応援しちゃうんですよね。まずは日本一決定戦での活躍、そして今後に期待します!
当日の写真じゃなくてごめんね、岡本選手。でも、皆さん、
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。