今年もレースに関して言えば、ありとあらゆるレースを見てきて、いろいろ思うところはありましたが、「こんなに面白いレースになったのか!」って感じたのは、インタープロトシリーズでした。今週の速報でも取り上げましたが、普通のレースファンレベルだと、そんなに馴染みのないカテゴリーだと思うんですよ。ビッグレースとの併載じゃなく、それ自体がメインなので。なので、わざわざ見に行こうという人か、あるいはKYOJO-CUPを見にきたら、大々的にやっていた、って人だけだと思うんです。
今は、情報というのは与えられるものではなく、自分で得るものだから仕方ない部分はあって、インタープロトシリーズを運営している関谷正徳さんを筆頭とする、いろんな方が努力しているけれど、関心を持ってもらわないことには始まらなくて……。まぁ、でも一度、知ってもらえればインパクトのあるクルマだと思うんです。実際、昔のバイト仲間が、当時はレースなんてまるで興味なかったのに、高速のSAのイベントで展示されたクルマを見て、「なんか、すごそう」ってレース見にきちゃったぐらいですからね。
これは今、見るべきレースですよ。正しくは今年もうシリーズは終了しちゃったんで、「来年は絶対に見るべきレース」と言うべきでしょうが、ホントそんな感じ。掛け値なしに面白いんですから。空力パーツがどう機能しているのか分からないほど、いっぱい備えられている昨今のレーシングカーに比べると、シンプルというか物足りなさも感じるかもしれませんが、そこがいいんです。ウイングすらついていないから、ダウンフォースは当然少ないと。だからコーナーが不安定なんですけど、そこをコントロールするドライバーの力量が問われるわけで。
で、ダウンフォースが少ないってことは空気抵抗も少ない、ってこと。だから、よく聞かれる「後ろにつくと、ダウンフォースが抜けて不安定になる」ってのがない。逆に入ったら空気がきれいに流れているのかな? 案外スリップストリームが効かないようにも思うんだけど、抜けないまでも、後ろにつけばタイムアップの要素になるのは間違いないようです。さらに、イコールコンディションがいい感じに保たれている。今回の予選は、久々のドライコンディションだったこともあって、12台出場していたんですが、トップから11番手まで1秒以内なんです。もう1台はミッショントラブルがあったようなんで、何もなければ全車揃っていた可能性もあります。それが可能なのはプロフェッショナルクラスには、日本を代表するドライバーが揃っているからでもあって。
GT500のチャンピオン、平川亮選手がいて、スーパーフォーミュラのチャンピオン、石浦宏明選手もいて、GT500のチャンピオン経験を持つ松田次生選手やロニー・クインタレッリ選手、平手晃平選手もいて、他にも関口雄飛選手、中山雄一選手、坪井翔選手、山下健太選手……と、超豪華な顔ぶれで! レース前は火花バチバチだけど、終わった後はみんなリラックスしているようだから、ファンも交流をはかりやすいし、レース後にはトークショーとかもやっています。それでいて入場料はたったの2,000円で、しかもパドックフリー。今回はアジアン・ル・マンシリーズまでついてきたけど、通常は富士チャンピオンレースとの併催なんで、もっと身近なレースも楽しめるっていう意味では、観戦入門にも適したレースだと思うんです。
で、今の感じなら、初めて見た人でも必ずレースが好きになる。これは絶対! 数台が連なってトップを争うなんて光景、近頃じゃあんまり見られなくなっているし、しかも8周、10周のレースが間髪入れず、続けて行われるっていうのが、なんて言うのかな、緊張感を保ったまま見ていられる、ちょうどいい長さというか。インターバルで、ちょっとだけ息も抜けるし。これは本当に、だまされたと思って一度は見て欲しいレースです。
ただ、パドックフリーでピット解放までやって、しかもグリッドウォークがあるから、止まっているところを身近で見られるメリットは確実にあるんですが、やっぱり走っている姿を見ていただきたい。ひとつ残念なのは、スタンドにお客さんが少ないこと。あれだけ激しいバトル、1コーナーとかダンロップコーナーの攻防なんて特に、生で見たらすごく興奮すると思います。なので、何か見にきてくれた人たちを、スタンドに誘導する術はないものかと。すると、ドライバーたちももっとエキサイトしてくれると思うんです。何はともあれ、来年は富士スピードウェイに来てくださいね、見ましょう!
Photo by Koji Ikeda
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。