このところ、FJ日本一決定戦がトーンダウンしているような気がして、まぁエントリーリストの発表も遅かったこともあり、あえてプレビューみたいなのは書かなかったんですけど、今振り返ると大失敗! 今年久々に、やはり見るべきレースだと思いました。
本命と目されていたのは、岡山シリーズのチャンピオンでF1日本GPサポートのドリームカップを制していた岡本大地選手。ここまでスポットの鈴鹿シリーズ第3戦を含め、無敗ときているから、当然といえば当然でした。で、その時2位の小倉祥太選手はもてぎシリーズのチャンピオン、ただ鈴鹿でのレース経験が1戦だけ……というのが、ちょっときになるところではありました。次いで、鈴鹿シリーズチャンピオンの山内飛侑選手、そしてタイトルを争い合った名取鉄平選手と、結論から言うとほぼ順当な結果にはなったけど。
左から2位の小倉選手、ウィナーの名取選手、
この中で、いちばん鈴鹿でのレース経験も、走行経験も少ない、小倉選手が第1レグもファイナルもポールポジションを奪ったのは、ちょっとだけ驚きでしたが、もっと驚いたことが。第1レグ2番手から好スタートを切った岡本選手が、1コーナー進入までに失速! なんとギヤが割れてしまったとのこと。今回はファイナルに用意されたグリッドは40で、エントリーは42台でしたから、第1レグ各グループから1台ずつファイナルに残れないことは明らかでしたが、まさか本命のひとりがそうなるとは! 2年前なら敗者復活戦が設けられていたので、きっと岡本選手は激しい走りを見せて這い上がってきたことでしょう。が、それがなかった今年は……。かける言葉がない、というのを生まれて初めて実感しました。
で、そういった大波乱を除けば、ファイナルの上位グリッドは順当だったと言えます。小倉選手の脇には、第1レグを制した山内選手がつけましたが、金曜日の練習走行でサスペンショントラブルを抱えて、軽くクラッシュしているんですね。これがもし土曜日に発生していたら、フロントローに並んでいてはいなかったでしょう。そして2列目には名取選手と、Aグループで予選トップだった鈴木智之選手が並びます。名取選手は全日本カート選手権を戦い、合わせて受講していたSRS-Formulaで首席合格して、来年のFIA-F4フル参戦が決まっているドライバー。さらに鈴木選手は鈴鹿シリーズのランキング2位で、今年は雨のレースで2勝。そして思い起こせば、昨年の日本一でも予選トップで、まわりをびっくりさせつつ、それがきっかけでグイグイ上がってきたという……。
私なんかにしてみれば、もうそれだけでもワクワクものですが、3列目には35歳以上のドライバーを対象とした、レジェンドドライバーが並んでいたのも拍車をかけてくれました。今大会最年長のHIROSHI選手と九州のベテラン、吉田宣弘選手が「最近の若いやつらは、だらしない。もっと頑張れやぁ」と言ってくれているようで感慨深かったですね。
ファイナルのトップ争いが、まぁすごかった! まずスタートで山内選手を名取選手が抜いて、2番手に浮上するも、その間にトップの小倉選手が逃げていたという。それなのに、まさかのSCラン。これで小倉選手はせっかくの貯金を失ったばかりか、フォーミュラでは初めてのリスタートを経験することになります。こりゃ、全日本カートで(きっと)えげつないローリングスタートを何度もやっている名取選手が有利かと思いきや、「テレビで見たのを思い浮かべて」小倉選手は逆転を許さず。これで後続との差を広げた格好でしたが、4番手争いも吉田選手と鈴木選手が激しく繰り広げ、もしトップ争いがばらけていたなら、こっちがハイライトになったでしょうというぐらい見応えはありましたね。
ただ、あまりにもトップ争いが面白すぎた。10周のレースだったんですが、もうちょっと見ていたいと思ったほど。たぶんトータルのスピードでは小倉選手が一番だったと思いますが、名取選手のしっかり抑えるところは抑える、っていうホーム感もすごくて、勝つべくして勝ったという感じもしました。セットも第1レグまではどうやら合っていなかったようですが、それを「自分の判断でアジャスト」というあたり、せいちょうもしているんでしょうね、しっかり。
話は戻りますが、やっぱり日本一決定戦は見るべきレースでしたので、来年は直前に大騒ぎします。舞台はもてぎに移りますけど(鈴鹿と隔年開催なもんでね)、きっと見た方はまた大興奮の坩堝のはず。それにしても、こないだのインタープロトシリーズといい、年末にいいレースを見させてもらったので、今年はもうオフなんて怖くないぞ〜。つらくもないぞ〜。そして、あと1戦、富士でグッドイヤー86/BRZ&Vitzドリームカップ。ナンバーつきワンメイクの6時間耐久も、私を感動させてくれぇ〜!
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。