近年、じわりじわりと台数を増やしているレースがあります。それがFIT 1.5チャレンジカップです。文字どおりFIT RSのワンメイクレースで、ナンバーなしのN1車両で争われます。ビッグレースのサポートとしては行われないため、今ひとつ認知度は低いですけど、ホントじわりじわりという感じでね。
発祥の地、もてぎで2012年にスタートした時は、もてぎ1.5チャレンジカップとされ、FIT RS以外にも出場が許されていて、超軽量のヴィッツとかも出ていたんですけど、2015年に鈴鹿でもシリーズが設けられ、もてぎの方もSUGOを舞台に含めてからは、FIT RSだけになっちゃったんですが、それは良しとして。いや、オープンのままだったらロードスターなんかも出ていたかもしれないので、ちょっともったいない気もしないまでもないですね。
何はともあれ、じわりじわりの理由はM-TECが年間10台ずつ、ベース車両を販売してくれているから。まぁ、FIT3も出てからボチボチなので、中古車両を探して作るという、昔ながらのやり方もありますが、そうそう都合よくMT車両が出てくるかどうか。じゃあ、新車を購入したら。あ、ほぼ200万円なんですね。中古でもそこそこしますなぁ。その点、ベース車両はナンバーこそつけられませんが、180万円で購入できるっていう。で、競技車両にする上では必要のない、助手席やリヤシートが着いてない代わりに、指定部品であるロールケージやエキゾーストシステムが着いてくるっていう。その上、購入支援として最大3戦に8万円の支援金あり! こりゃ、お得だ(笑)。
で、N1車両ってことは、エンジンは原則としてオーバーホールができる程度だけど、車高を下げたり、パーツを吟味して着けられるんですね。だから、走りはより本格的で、しかも自分好みの味つけにもできるわけです。タイヤもSタイヤの装着が可能で、ワンメイクじゃないし。
興味深いのは、ナンバーつきレースのステップアップカテゴリーとは、ほぼなっていないこと。なんでか食いつきが悪いのは、こういうクルマに関心がないのかな。逆に、このレースに出ているドライバーは大半が、昔シビックレースとかインテグラレースに出ていたって人。あの頃の味を忘れられないんでしょうね(笑)。言ってしまえば、ベテランばっかりだからバトルはけっこう激しいです。本当は見て欲しいレースのひとつなんですけど、そうだそうだ、今年からホンダのEco & Sportsプログラムで用いられる車両がCR-ZからFIT RSに改められたので、Ecoチャレンジや10リッターチャレンジで、同じような雰囲気を味わってもらえるかも!
今年からもてぎ・菅生シリーズに加え、鈴鹿だけじゃなく、岡山も舞台に含めるようになって、鈴鹿・岡山シリーズに改められたから、複数のサーキットを走れるのも魅力のうちになりそうです。ちなみに、昨年スーパー耐久の序盤戦に、海老澤紳一選手がTCRのシビックで出ていたのは、FIT 1.5チャレンジカップでチャンピオンを獲ったからっていう、スカラシップの賜物! 昨年のチャンピオン、ヒロボン選手も塩谷烈州選手も別なクラスでシートを得たから、今年はスカラシップなさそうだけど、またいつかやってくれそうな気もします。
それと今はJAFのツーリングカー地方選手権としての開催でもあるので、ライセンスの上級申請にも有利だし、繰り返しになるけれど、走りがより本格的なので、これを乗りこなせれば、スーパー耐久でも確実に通用するはずです。もっと注目されてほしいな〜。
さて、今週末はいよいよスーパーGTの開幕戦です。今年2回目の岡山……って、公式テストに行っている人もいますから、業界的にはまぁ普通か。こないだの富士も、公式テストだっていうのに人、けっこう入っていたから、またすごいことになっているんでしょうね。そうそう、ジェンソン・バトンの人気がすごい! ピット裏の人だかりに警備員がいたほどです。その点は、心しておいたほうがいいかもしれませんよ。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。