ル・マン24時間で、トヨタがついに勝ちました。19回目の挑戦にしてようやく、しかも日本人ドライバーが、日本のクルマに乗って勝つのも初めて。トヨタも中嶋一貴選手もおめでとう。でも、これがアウディやポルシェを相手にしての勝利だったら、もっと感動も大きかったんでしょうね。それは、見ている側以上に、走らせている側の方が感じているんでしょうが。
しかし、この週末、私の関心というのは完全に富士のレースにありまして、なんかすごいことになっちゃったなぁ、っていうのが本当のところ。いやいや、いい意味でね。KYOJO-CUPというか富士のVITAレースと、インタープロトシリーズのプロフェッショナルクラス。去年も絶賛しましたが、これは見るべきレースですぞ。
まずVITAですけど、小山美姫選手の覚醒感がすごい! コンディションと後述する、ある条件に恵まれたっていうのはありましたが、今までのレコードを2秒半も破っちゃったんですから。これが全体的にそうだっていうなら、そんな驚きはしなかったでしょうけど、2番手を1秒半もぶっちぎったら、さすがに「すげぇ」としか言いようがないですよね?
しかもKYOJO-CUPだけじゃなくて、男性ドライバーも走るFCR-VITAでも同じような状況だったんです。で、どっちのレースも小山選手がひとり逃げたわけですが、その後ろでも激しいバトルがあって、見応え十分! 現代に蘇ったマイナーツーリング、って以前にも書いた覚えありますが、本当にそんな感じでした。
去年からいろんなレースに出て、引き出しを増やした感はすごくありましたね、小山選手に。今回BMWの育成ドライバーで、フォーミュラルノー3.5やGP3にも出たことがあるという、ベイスク・フィッセール選手も訪れていましたが、このレースウィークだけの練習では、実力は発揮しきれなかったかも。だからこそ、次回も出て欲しいんですけど、現状、太刀打ちできませんでしたね。せめてFCR-VITAに、強力な対抗馬が欲しいところです。今のスピードで、バトルを経験したら、もっと強いドライバーになりそうですから。
で、蘇ったマイナーツーリングがあるなら、蘇ったグラチャン感もインタープロトシリーズにありました。なんだよ、あの壮絶なバトルって感じ。まぁ、当時と全然スタイルは違うんですが、スリックタイヤを履いた、ダウンフォースの少ない、しかもワンメイクレースって最高ですね(むしろ、グラチャンは逆でしたが)。それを最高の実力を持ったドライバーたちが操ると、あんな魅力的なレースになるんですね。
最後の最後の大どんでん返しなんて、ドラマチックすぎました。「いちばん速くなかったから、あんまりカッコよくないなぁって思います。勝った感じもしないし……」と中山雄一選手は言っていましたが、「運も実力のうちだから」と、思わずポロっと言ってしまいました(笑)。
パドックにも賑わいがあって、ピットの一部を観戦用に開放していましたから、訪れた観客は、きっと臨場感も味わえたでしょう。あとは、このレースでどうスタンドを埋めるか。
あえて、いっそグリッドウォークをやめてしまうとか。で、昔のグラチャン風に、スタンド前に赤じゅうたん敷いて、選手紹介なんて。グッズの投げ入れで、ミサイルボンバー(笑)。あ、これは一時期のスーパー耐久ですな。サインボールでもいいじゃないですか。何はともあれ、スタンドの埋まるレースになってくれると、なお最高なんですけどね。
今週末は、岡山国際サーキットに行きます。メインはGR 86/BRZレースですけど、可能であれば全レース取材! でもでも、あのレースだってプロシリーズは、すごいドライバー揃いなんですから、うまいことやって観客を集める術は、なんかないもんですかね?
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。