今年初めて取材で訪れたスーパーフォーミュラ。「なんか観客多くない?」って思ったんだけど、プレス仲間によると、実際に今回は多かったよう。特に1コーナーのスタンド、写真見てびっくり。日曜日なんか天気に恵まれたせいもあるでしょうが、かなり入っていましたもの。
人気の凋落が叫ばれて久しい、スーパーフォーミュラですが、実際のところどうなんでしょう。私は同じ日に別な仕事が入ることが多くなったので、昨年からあまり行けなくなったんですけど、見たら見たで面白いんですよ。ひょっとしたら、リピーターが増えているのかも。特に富士は抜けるもんですから、その一番のオーバーテイクポイントが1コーナーってことであれば、そこに人集まるのは当たり前っていうか。
それにしても天気の忙しい週末でした。木〜金と雨に見舞われ、F3なんて練習はずっと濡れた中。それで予選も同じような状況になっていたのに、決勝になるとドライだって。なんのための練習だったの、って感じでしたね。それ以上にスーパーフォーミュラの予選は、嫌がらせのレベル(笑)。それまでドライだったのに、Q1直前になってパラパラきて、一応ウェット宣言は出されたけど、全車ドライタイヤでスタートできたのに、途中からザッと降ってきて、あっという間に水浸し。Q2までの短いインターバルの間に雨はやんで、またドライで走れるようになったはいいけれど、Q3の始まりでまたポツリポツリと。
雰囲気としたら、1周か2周ドライタイヤでアタックできそうな中、ひとりウェットタイヤで行ったぜ、中嶋一貴選手! 勇み足かと思われたものの、セクター3でドワっと雨が。こりゃ決まりだと誰もが思う中、他のドライバーがピットに戻ってタイヤ交換、猛アタックする時間は残されていないはず……と思ったんですね。こりゃ、一貴選手は笑いが止まらないと。ところが、最後の最後いちばんおいしいタイミングでは、もうウェットタイヤが終わっちゃったばかりか、他のドライバーも素早い作業でコースに戻され、アタックの余地があったってことで、大逆転が果たされることに。ポールポジションはニック・キャシディ選手が獲得しました。
で、今回は富士で初めてタイヤの2スペック制が実施され、ソフトとミディアムの両方を使わなきゃいけないと。問題はスタートでどっちを選ぶか? 結論から言えば、スタートでソフトを履いて、長く走り続けられたドライバーに正解があったようですね。もっとも、それが言うが易し……なんでしょうけど。ポールから逃げるキャシディ選手を、追う石浦選手ももちろんソフトを選んで、そのふたりに着いていけずという状況の中、ミディアムを選んだドライバーは9〜12周目にピットインって状況。
結局は同じように長い周回をソフトで走る形となったわけで、グループが完全に分かれる中、先にソフトが有利なのか、後でソフトが有利なのかと、見る方に想像させる展開も良かったですね。結局、先が正解だった一方で、後を選んだ国本雄資選手も3位だったわけで、必ずしも失敗ではなかったということになりました。
また、バトルも激しくて、最後に山下健太選手がぶっ飛ばされた以外は、総じてクリーンだったのもいい感じ。ピコピコ光るオーバーテイクシステムも、なんかドライバー同士の意地の張り合いみたいなのが分かって良し。勝ったキャシディ選手の「今までの人生で一番大事なアウトラップ」って言うほどの、なかなか分かりにくいところではあるんですけど、奮闘もありましたし、それと石浦選手がピットを離れる時の一瞬のロス。あれはギヤが入っていなかったんだそうです。その時の「あぁ〜」って思いも伝わってきましたね。
少なくても、この富士でのシリーズ第4戦、スーパーフォーミュラも見るべき一戦でした。ジェイ・スポーツのオンデマンドだと、いつでも見ることができるんで、ちょっとオススメです。誰です、スーパーフォーミュラがつまらない、って言ったのは(笑)。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。