雨のレースはやばい。ちょっとぐらいならいいんですが、こないだの岡山ぐらい降っちゃうと、もうどうしようもないですね。昔は「雨の中、速いやつが本当に速いやつ」なんて言われたもんですし、実際そのとおりかもしれませんが、GTぐらい空力とかエンジニアリングを重視するようなカテゴリーでは、もうそういう問題じゃないんですね。車高を上げたり、タイヤの空気圧をパンパンにしたり、ウィング立てて……って時代じゃないと、もう。
問題は水たまりとか川。だからといってサーキットの路面を、一般道みたいにかまぼこ状にするわけにはいかないし、脇に排水路を設けるわけにはいかないし。いろんなことが現代になって進化しているわけですから、なんかできないんですかね、サーキット路面に工夫が。少なくても浸透性は無理ですよね。タイヤのゴムで、すぐ詰まっちゃうでしょうし。でっかいスゥイーパーみたいなのをセーフティカーと一緒に引っ張っていって、水を履いちゃうことなんかできないのかな? あ、すぐに元に戻っちゃうか。それじゃ意味がない。
話は戻っちゃいますけど、少々の雨でしたら、そこにドラマや極端な話、スペクタル性も加わってレースを盛り上げちゃうことだってあるんです。突然、水を得たカエルのように、文字どおりなっちゃうことだってあるわけで。あのGTぐらい降ったって、タイヤにしっかり熱が入れば、しっかり走れるんです、何事もなければ。でも、今回はアクシデントの連続でセーフティカーが入ったり、赤旗で中断されたりしたじゃないですか、何度も。それで発熱がリセットされちゃうんです。
結果として上位だったのは、その発熱が早いタイヤだったり、そういうクルマだったりしたから。たとえば、GT300でポールポジションだったNSXの高木真一選手を、RC Fの新田守男選手が抜いたのは同じタイヤであるけど、NSXはエンジンを真ん中に、RC Fはエンジンを前に置くから、そういったウェイトバランスの関係上、フロントタイヤの温まりがRC Fの方がいいからで。その意味で、早めの勝負を仕掛けた新田選手が巧みでした。
まぁ、高木選手も縁石に乗ってバランスを崩してはいるんですけど、「来るな」っていうのは分かっていたでしょうね。ましてや元チームメイトだから手の内は知り尽くしていて、そうなることは予想していたでしょうから無理はせず、逆の立場になった時、行こうと思っていたんでしょうが、次の機会は訪れなかったということで……。このあたりなんか、面白さの部分なんですけどね。
ギリギリの領域で走っているから、起こるアクシデントはミスに起因している、っていえば、そのとおりなんだけど、実際には紙一重なんですよね。ほんの少しの不運が積み重なっちゃって発生するという。でも、今回はそういうのが多すぎました。あんなに頻発したレースって、今までそんなになかったんじゃないかと。
何より観客の皆さんが気の毒。サーキットって屋根のある観客席はごくわずかで、いちばん走りを楽しめるコーナーの観客席には、それがありません。これだって少し、なんとかならないものかな……と思いますけどね。極端に寒くなかったのはちょっとだけ救いでしたが。でも、あんなにセーフティカーに先導されたままの周が長くては、せっかくの迫力も台無し。そう考えると、もう少し早い段階での終了決定でも良かったんじゃないかと、今になってみると思いますね。いずれにせよ、お天道様にはかないません。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。