さてさて、改めてスーパーFJ日本一決定戦について書くこととしましょう。エントリーはスーパーFJで競われるようになって、最多の47台。まぁ、FJ1600の頃、3グループに分けられて、第2レグもあったし、敗者復活戦まであったことを知る身としては、「まぁね……」と言いたいところですが、それでもやっぱり増えたというのは素晴らしいこと。スーパーFJが再評価されているんですかね。ファイナルのグリッドが50台に増えたこともあり、ある意味ちょうどいい台数だったとも言えるでしょう。
ただね、ちょっと気になったのが、関東からのエントリーが極端に少なかったこと。たったの6台でした。まぁ、言わんとするところは分かるんですよ。到底、勝ち目がないから、ってでしょう? そのとおりではあるんですが、それでももっと出て欲しかった。優勝したり、スカラシップを獲ったりすることが、すべてじゃないと思うんですよ。せっかく全国から、これだけのドライバーが集まってくれたレースです。自分のレベルを知るには、格好の機会なんじゃないかと。
ぶっちゃけ、今スーパーFJが盛り上がっているのは鈴鹿だけです。筑波とオートポリスは、二桁のエントリーを集めるけど、それ以外のシリーズは常に一桁。対照的に、いつも20台以上集まっているのが鈴鹿です。どちらの方がレベル高いかは、誰にでも察しがつくと思います。
今はシリーズごとのレース数が少ないので、ホームとして挑むシリーズを持ちつつ、今年から設けられた、全国転戦の「ジャパンチャレンジ」に何戦か出るとか、鈴鹿にスポットで出るとか、よりスキルを上げる手段はあると思うんです。まぁ、お金のかかることだから、誰でもできるわけじゃないのは分かっています。
ならばこそ、日本一決定戦は積極的に出るべきじゃないかと。あれだけの台数がいれば、それぞれのレベルごと、随所でバトルが繰り広げられるわけです。それで自分のレベルを知るというのが、非常に重要なんじゃないかと。その上で来シーズン、一段上の自分を目指していく……というのが理想だと思うんですが、でもこれ、今ふうの考え方ではないんですかね?
FJ1600の時代は、命こそ賭けていないけど、レース人生は賭けていたドライバーがかなりの数で存在しました。スカラシップを獲得して、一発大逆転と。なので、パドックにはヒリヒリとした雰囲気がありました。その緊張感が好きだったんですけど、今はなんて言うんでしょう、和やかな雰囲気なんですね。純粋にレースを楽しみに来た人もいたでしょうし、それはそれでいいこと。でも、「近づいてくんな」的なオーラを発するドライバーも見たかった(笑)。
だけども、優勝した岩佐歩夢選手は、表彰式でもいい顔していた。すべてを出し尽くした達成感でしょうね。対照的に涙まで流していた2位の澤龍之介選手、最後まで笑顔を見せなかった3位の入山翔選手。気持ちはすごく伝わったよ。悔しかったんだよね〜。でも、その悔しさがきっと君たちの糧になると思う。もっと自分を磨いて、さらに強いドライバーとして、みんなの前に現れてほしい。その他のドライバーにも、いろんなことを感じ、そしてつかんだと思う。それをベースに、より成長してほしいよね。
残念賞は、富士チャンピオンの木下藍斗選手と、菅生チャンピオンの山陰一選手。ふたりとも低迷はしたけど、上には上がいることを確認したと思う。納得できなかったら、ぜひ再チャレンジしてほしい。そして来年の日本一決定戦で「すごい、よくこれだけ成長したね!」と言わせてほしい。そして、このふたりを超える、「残念大賞」は岡本大地選手に。
すでにスーパーFJは卒業したドライバーですが、岡山チャンピオンだった2017年に本命のひとりとして数えられて日本一決定戦に出たものの、ドライブシャフトの破損でファイナル進出ならず。それで「忘れ物を取り戻しに来ました」とリベンジに挑み、ファイナルでいきなりトップに立ったにも関わらず、赤旗提示後のスロー走行が仇となり、燃料ポンプのトラブルでエンジンが止まってしまうなんて……。いつか報われることを祈っているよ。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。