筑波のプレスルームで最後のレースの正式結果を待つ間、「ん、どうなったかな……」と、マカオGPのネット動画を見たら、ちょうどラスト2周。リスボアの4ワイドの後、より一層、一騎討ちでのトップ争いが激しくなって、最終ラップの最終コーナーでまさかの展開が! 一瞬、息を飲んだよね。こんなこともあるんだ……って、それがマカオGPなんですよね。久しくあの刺激を体験していないし、来年あたり、またと思い始めています。
今年の筑波のレース、ラストを締めくくるのはVITA-01とLegend Carによる150min耐久。ポールポジションはVITA-01の茂木祐一/加藤正将組で、チームメイトの相馬充寿/青木康浩組とフロントローを独占。一方、Legend CarはVITA-01勢に2秒遅れで、トップはたしろじゅんを僅差で従えた、日比野哲也/塚本奈々美が獲得した。
決勝では加藤がスタートから飛び出し、オープニングの1周だけで後続に1秒8もの差をつけ、そのまま逃げていく。41周目の茂木への交代時には、15秒以上の差をつけた。変わってからの茂木のペースもコンスタントで、やはり後続を寄せつけず。そして残り50分となった84周目から再び加藤がドライブすると、ついに全車をラップダウンとするまでとなっていた。「完璧なレースでした。何より茂木さんが頑張った。序盤に僕が作ったリードを広げてきてくれましたから」と加藤。2位は相馬/青木組が獲得し、3位は鶴賀義幸/武村和希組のものとなった。
Legend Carでは、たしろじゅんが2周目にトップに立ち、そのまま逃げ切りに成功。優れる燃費も味方になって、一時は総合トップにも浮上した。対照的に2番手争いは激しく、めまぐるしく順位は入れ替わったものの、日比野/塚本組が2位、そして橘川知/佐藤拓組が続いてフィニッシュ。
2番手の伊藤健に1秒半の差をつけ、向山弘康がポールポジションを獲得。決勝でも、そのまま逃げ続けるかと思われた。しかしながら、いざバトルが始まると伊藤は向山に食らいついて離れず、何度もアタックをかけられる。それでも向山はそのつどガードを固めて逆転を許さず、中盤にはようやく差を広げるように。しかし、残り3周になって再び伊藤が急接近。しかし、辛くも向山は逃げ切りを果たす。「最後、追いつかれたのは後ろが頑張っていたからでしょう」と相手を賞賛することも忘れなかった向山であった。
ここまで出場したレースは2戦2勝の大歳岳がポールポジションを獲得、全勝の期待が抱かれた。ところが、大歳はスタート直後に後続車両と接触。なんとか復帰はなったが、これでほぼ最後尾まで後退してしまう。予選2番手だった村手順一がトップに立ち、一時は独走体制としていたが、そこに迫ってきたのがAE86の廣田耕司だった。逆転も時間の問題か、と思われたものの、廣田よりも速いペースで迫ってきたクルマが……。それがなんと大歳だった。幸い足回りにはダメージはなく、すぐに追い上げを敢行。トップを争う2台に追いつくと、9 周目の最終コーナーでまず廣田をかわし、11周目には村手をもかわしてトップに浮上した。
「自分でも、まさかこんなことになるとは思わなかった。当たりどころは良かったんですね」と大歳。一方、村手を抜くことは最後までできなかったが、廣田はAE86で優勝を飾り、「実に楽しいレースになりました」と久々の優勝ということもあって、非常に満足そうだった。
軽自動車のN1車両によるGT66は、シーズンを通じてカプチーノの伊藤秀昭が参加するのみ。一時はマーチ勢をもかわしていたが、終盤に逆転を許し、ついていくのが精いっぱいだった。一方、マーチレースは常勝・荒井康裕を1000分の1秒差で下して、小磯卓也がポールポジションを獲得。だが、決勝ではスタートと同時に小磯を荒井が食らいついて離れず、それどころか早々に勝負を仕掛けていく。その最中に接触があったものの、大きなダメージではなかったことから、荒井は4周目の1コーナーでついにトップに立つこととなる。そのまま逃げ続けるものと思われたが、意外に差は広がらず。「接触でフェンダーとタイヤが少し当た流ようになって、少し音も出始めていたんです。変にオレンジボールとか出されたら嫌なので、慎重に走っていました」と荒井。これでシリーズ6連覇も達成、「来年はそろそろ……と、少しずつ思い始めています」とも語っていた。3位は青野誠之が獲得した。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。