あれから7年経つんですね。あの時もサーキットにいて、鈴鹿でした。そこでは震度3ぐらいでしたが、ずいぶん長い揺れだな……とは思いましたが、直後にはまさかあれだけの事態になっているとは知らず。忘れることはできませんね、いろんなことを。
FIA-F4からスーパーFJに活動の場を移した神晴也(じん せいや)が、2番手につけた上田裕也にさえ、1秒半の差をつけてポールポジションを獲得。それでも、「全然納得していません。ベスト出した周波セクター3までベストで刻んでいけたのに、90度コーナーでリヤが滑ってしまって。それさえなければ、もうコンマ2、3秒は縮められたと思います」と悔しそう。決勝では「できれば、15秒はちぎってきたいと思います」と神。
その決勝ではホイールスピンが大きく、ややスタートは失敗気味だった神ながら、トップは譲らず。2番手には絶妙のスタートを決めた石崎竜一郎が2番手に上がるも、90度コーナーで上田はすぐに逆転。オープニングの1周だけで約3秒の差をつけた神は、その後もペースを抑えることなく周回を重ねて独走態勢に持ち込むも、公約の15秒差には、あとコンマ8秒届かず。「本当は最終ラップにファステストラップを出したかったけど、出せなかったし、、15秒差でのゴールもできず、今後に課題を残すレースになってしまいました。今年狙うのは、もちろん全戦全勝。それでまたFIA-F4に戻りたいです」と神。あまり、その表情に笑顔はなかった。2位は上田が、3位は石崎が獲得した。
Photo: Koji Ikeda
もてぎをホームコースとする阿久津敏寿がポールポジションを獲得し、チームメイトの小林天翔とともにフロントローを独占する。「コンディションが良かったので、いいタイムが出せたと思います。実はもてぎでは勝ったことがなくて、なんか緊張しちゃうんですよ(笑)。今回はチャンスなんで狙ってみます」と阿久津が語れば、「今年からタイヤを変えたんですが、先生に教わりつつ、予選も後ろで走ってだいぶ勉強させてもらいました。早い段階で後ろを引き離して、ふたりだけでバトルできたらいいですね」と小林は語っていた。
決勝では、最初の2周だけ後続を引き連れていたが、やがて小林の宣言どおりの展開に。阿久津がしっかりガードを固めていたものの、「最後、疲れちゃいました(苦笑)。タイヤがきつくなって、オーバーがではじめたんです」という阿久津の一瞬の隙を、小林が突いたのは6周目のヘアピン。前に出た小林が逃げ切って優勝を飾った。「出るからには勝ちに来ていて、阿久津さんにプレッシャーかけつつ、決勝でもまた学ばせてもらいました。前半(タイヤを)温存していたので、チャンスがあれば行こうと思っていましたが、ワンチャンスが訪れてくれました! 次の富士も、この調子のまま行きたいです」と小林。3位は岩間浩一が、西郷倫規の追撃をかわして獲得した。
連覇を狙う茂木祐一が、レコードタイムを更新してポールポジションを獲得。「コンディションも良かったので、出そうな気がしていました。決勝もこの調子で、落ち着いて走って逃げたいですね」と茂木は語っていたのだが……。2番手は黒岩巧が獲得。早々にピットに戻っていたが、それは接触があって足まわりにダメージを負っていたため。「もうちょっと出せたはずなんで、ちょっと悔しいですね。でも、決勝では必ずバトルに持ち込んでみせます」と、すぐに気持ちを入れ替えていた。
決勝ではなんと茂木がスタートに出遅れたばかりか、なんとジャンピングスタートの判定が……。好スタートを切った黒岩がトップに立ち、2番手にはひとつ順位を上げた武村和希がつけ、茂木は3番手で、しかも3周目にはドライビングスルーペナルティを課せられる羽目になる。そのため、トップ争いは一騎討ちとなり、特に武村はVITAでの初レースとは思えぬ走りで黒岩に食らいつくも、逆転の決め手は欠いていた。最後までトップを黒岩が守り抜き、今季まず1勝目をマークした。「(茂木が)フライングしていたけど、僕自身はいいスタートが切れたのが良かったです。本当はもっと離したかったけど、あれが精いっぱいでした。次はぶっちぎります!」と黒岩。一方、茂木は9番手まで後退したが、ファステストラップも記録しながら6番手にまで追い上げていた。3位は相馬充寿が獲得。
関直之が2番手の貴島康博に1秒7もの差をつけ、ポールポジションを獲得「もうちょっと出るかと思ったんですが、最初のアタックでスピンしてしまい、少しタイヤを痛めた感じもあったので、それさえなければもっと行けたと思います。ただ、けっこうな差があるので、決勝は落ち着いて。去年はフライングから始まって、接触やプラグ抜けまで、いいところがなかったので、今年こそ行きますよ!」と関。スタートも決めた決勝では、後続が激しいバトルを繰り広げてきたこともあり、早々に大差をつけることに。一方、予選4番手から勢いに乗る鯉渕貴比古が1周目に2番手に浮上、貴島を従えることとなる。が、そのふたりのバトルは最後まで続いたものの、4周目の5コーナーで貴島が再び前に出た後は、硬いガードで鯉淵の逆転を許さなかった。
「2年間、悔しい思いをし続けていたので、ようやく……といった感じです。とにかくミスをしないよう集中して走り、途中からはペースを抑えることさえできました。今年こそ、このままの勢いでシーズンを終えたいです」と関。
今年からタイヤを改めたチャンピオン、塩谷烈州がポールポジションを獲得。海老澤紳一をコンマ02秒差で従えた。「このクラスは、いつも100分の1秒台での差がつかないから、しんどい。実は仕事の都合で、練習を走れなかったんですが、暖かったせいでセットをみんな変えていたようですが、今日はまた冷えちゃったでしょう? それでセットが合わなかった人も多かったみたい。かえって走れなかったのが良かった(笑)。決勝では初めてのタイヤなので、どうなるか。ずっとエビちゃんが使っているタイヤだから、あっちの方が有利かも」と塩谷は海老沢の脅威を少なからず感じていたよう。
だが、決勝では塩谷、海老澤とも好スタートを切ったこともあって、いきなりの順位変動はなし。1周目こそ1秒3の差を海老沢に対してつけた塩谷ながら、以降はピタリと海老澤のマークを食らってしまう。とはいえ、海老沢も今ひとつ逆転の決め手を欠いているようで、プレッシャーをかけるまでには至らず。その結果、塩谷がほぼ1年ぶりとなる優勝を飾ることとなった。「去年まで使っていたタイヤがグリップしすぎていたから、すごい競り合いになっていたけど、今年のタイヤは(ストレートが)伸びるので、同じ条件だったら前にいた方がかなり楽。途中からは合わせて走ることさえできました」と塩谷。海老澤は「完敗!」と。3位は中村義彦が獲得、実に2年ぶりの表彰台ゲットとなっていた。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。