今年最初の(最後ともなるか?)、十勝スピードウェイ。全国的に涼しい週末だったようですが、北海道は涼しいを通り越して、ちょっと肌寒かったぐらい。まさか8月にウルトラライトダウンが役立つとは! それにしても86/BRZレースはWヘッダーなのに、1デイ開催はちょっと負担がみんなに大きかったように思いますね。
今回はクラブマン、プロフェッショナル両シリーズともWヘッダー大会で予選は1回のみ。ベストタイムを第6戦の、セカンドベストタイムを第7戦のグリッド決定要素とし、タイヤは2セットの使用が許された。2セット使った2アタックがセオリーかと思われたものの、クラブマンシリーズの予選では、あえて1セットで連続アタックに行く者も存在した。第6戦のポールポジションは、これが初めての獲得となる水野大。これに神谷裕幸、庄司雄磨、橋本洋平、水谷大介が続いた。決勝では1コーナーのみならず、4コーナーまで続いた先陣争いの末に、好スタートを決めていた橋本がトップに浮上。逆に水野と神谷は接触によって、徐々に順位を落としてしまう。
オープニングラップを終えた時、橋本に続いていたのは庄司と水谷。しかし、このふたりを序盤早々に引き離した橋本は、終盤に詰め寄られこそしたが、難なく逃げ切って今季初優勝。「今回の勝因は、もしかしたらフライングしたんじゃないかと、自分でも思ったぐらいのスタート。あれが大きかったですね。連勝すれば、僕にもチャンピオン獲得の可能性が。狙ってみます」と橋本。
プロフェッショナルシリーズの予選は、例外なく2セットタイヤを投じて2アタック。今回一番の話題は、ダンロップが投じたニュータイヤが猛威を振るい、ユーザーが上位を独占したことだった。第6戦のポールポジションを奪った青木孝行、かねてからのユーザー服部尚貴のみならず、あの谷口信輝までも! ただし、服部、谷口らはローカルルールで禁じられている、ピット内でのタイヤ交換を行ってしまい、2グリッド降格のペナルティを受け、代わって2番手には近藤翼、3番手に小河諒がつけたが、このふたりもダンロップタイヤを装着していた。
決勝では青木が好スタートを切り、序盤のうちにリードを広げていくが、ゴール間際になって原因不明の失速が……。これで近藤、小河、服部、谷口、そして平木湧也が一気に詰め寄るも、青木はまったく隙を見せず、辛くも逃げ切りを果たすこととなった。「シリーズ序盤はつらいことばかりで、クルマも壊れちゃったんで今回から新しくしてもらったんですが、チームのみんなには『結果で返しますから』って言っていたのを、すぐ実現できて良かった」と青木。2位は近藤が、3位は小河が獲得し、表彰台に立ったドライバーは揃って今季最上位に。
土曜日の専有走行で、元スピードスケート選手の清水宏保がトップタイムを記して話題を集め、予選でもポールポジション獲得の期待がかかったものの、コンマ03 秒の僅差で橋本元がトップにつける。決勝でも清水は橋本の背後につけてレースを開始するも、スタート違反のペナルティでドライビングスルーを科せられることに。今後に期待といったところだ。これで橋本が一気に楽になったかと思われたが、いったん3秒に及んだリードを詰めてきたのが、5番手スタートの堀内秀也。終盤に1秒を切るまで橋本に迫ったものの、逆転するまでには至らなかった。「近づかれたのは、後ろが頑張ったからでしょう。僕は別に……。後半タイヤがきつくなるのは分かっていたので、普通に走っていただけだし。ただ、横に並んできたら、その時はまぁ」と橋本。これで2連勝となった。2位は堀内で、3位は本間俊介が獲得。清水は11位で、あと一歩のところで入賞を逃していた。
スーパーFJ富士シリーズのポイントリーダーでもある、石崎竜一朗がVITA-01にもエントリー。2戦目にしてポールポジションを奪う。これに続いたのは佐藤元春、今野訓昌、坂野研。決勝がスタートし、オープニングラップにトップで戻ってきたのは「スタートが決まって、トップで1コーナーに飛び込めました」と語る今野。一方、石崎は3番手に退いた後、6周目の坂野のスピンもあって2番手に上がるも、「ミッションが渋くて、ペースが上がりませんでした」と、今野を追い詰めるまでには至らなかった。これで2勝目を挙げた今野からは、「今年こそチャンピオンを獲りたい。去年は同点でしたが、優勝回数で敗れましたから」と王座獲得宣言も上がっていた。
混走のザウルスジュニアは1勝ずつ分け合う、五十嵐弘昌が阿部晃太を予選で従えていたが、決勝では2周目にポジションを入れ替える。五十嵐を振り切るまでにはいかなかった阿部ながら、それは「次回も使う予定のタイヤなんで、負担を最小限にしたかったんです」という省エネ、いや頭脳プレイゆえ。最後は五十嵐を背後に置いたが、阿部は逃げ切りに成功した。
第7戦のポールポジションは神谷裕幸で、これに続いたのは庄司雄磨と橋本洋平。中島佑弥を間に挟んで水谷大介が5番手と、タイトルを争い合うドライバーたちがしっかり上位につけていた。まさに天下分け目の戦い、スタートを決めてオープニングラップのうちにトップに立ったのは庄司。これに続いたのは神谷だったが、ペースが思うように上がらず。代わって4周目から2番手に上がったのは、予選6番手だった菱井將文だ。しかし、第6戦の優勝で勢いに乗る橋本が中盤からじわりじわりと差を詰め、9周目の4コーナーで2番手に躍り出る。菱井はいったん水谷の先行も許したが、相手のミスに乗じて最終ラップには再び3番手に。一方、神谷は5位でのフィニッシュが精いっぱいだった。
「後ろからいろんな人が迫ってくるので、前を見て走れないぐらいミラー見て走っていました(苦笑)。今週は2位と優勝。かなり有利になったと思います。次で(チャンピオンを)決めます!」と庄司。
第7戦のポールポジションは谷口信輝が奪い、連勝狙う青木孝行が2番手。これに菅波冬悟、小河諒と、またもダンロップ勢が上位を占める中、井口卓人が5番手でブリヂストンユーザーとして最上位を得ていた。決勝では谷口が好スタートを切り、ポール・トゥ・ウィンを達成。「金曜日から使い始めたタイヤだから、ロングもかけていなかったので、朝のレースには不安を残していたんですが、1レース走りきったことで、だいぶ理解できたのが大きかったですね。後ろでふたりが激しくやり合っていたので、『ファイト!』って言いながらミラーで見ていました」と谷口。やり合っていたふたりとは、小河と井口。やがて近藤らも加えて一列で連なるも、「最後まで抑えきれるとは、自分でも思っていなかった」と語りながらも小河が2位を獲得、ただひとり2戦連続で表彰台に立つこととなった。3位の井口は久しぶりの表彰台へ。
十勝のオリジナルカテゴリー、初代ヴィッツによるN1レースは、表彰台に立つと20kg、15kg、10kg加えられるウエイトハンデ制度も設けている。35kg積んでなお中村高幸がポールポジションを奪い、2番手は20kg積む安藤義明、そしてノーウエイトの三浦稔呂が、35kg積む松橋智史を従えた。しかし、決勝では三浦が痛恨のスタートミス。トップでレースを開始したのは中村だったが、2周目に安藤がトップに浮上する。序盤はウエイトを積む3台で激しいトップ争いを演じたものの、中盤からは安藤が逃げていった。「今年になって(中村と松橋が)伸びてきたんですが、今回は僕の方がちょっと軽かったのが効いたかな? 今季初優勝で、やっと……という感じです」と安藤。2位は中村で、三浦は最後尾から激しく追い上げたものの、4位でのゴールがやっとだった。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。