日本初開催のWTCRに関しては、思うところあったのでコラムでアレコレ書かせていただきます。しかし、鈴鹿にしては詰め込んだタイムスケジュールで、けっこう無理があったように感じましたね。GR 86/BRZレースが土曜日のうちに終わってしまったのは、「なんだかなぁ」って個人的に思ったんですが、たぶん場内の総意だったんじゃないかと。
すでにチャンピオンを決めている、庄司雄磨の凱旋レースとなるか注目された最終戦。専有走行ではぶっちぎりのタイムを記録していたが、アタック前に赤旗が出されてタイミングを逸し、6番手に甘んじてしまう。ポールポジションを獲得したのは、岡山スーパーFJチャンピオンでもある大島和也だった。「いちばん前からスタートするからには、後ろを抑え続けて、しっかり結果を残したいと思います」と大島。2番手に水野大、3番手に神谷裕幸がつけた。
大島が好スタートを切ったのに対し、横に並んだ水野のダッシュは今ひとつ。1コーナーまでに神谷の先行を許し、さらに庄司が4番手に浮上する。その後は4台が縦一列。それぞれ一歩も引かず、激しい攻防を見せたが、庄司が意地の一発を決めて、4周目のスプーンで水野のインを指して3番手に躍り出る。その庄司はなおも上昇を目指すも、130Rのクラッシュで赤旗が出され、レースは終了。最後までトップを守り抜いた大島が初優勝を飾った。「序盤からきつかったんですが、なんとか皆さんの猛攻を振り切ることができました。赤旗で終わりになったのが残念ですが」と大島。
前回のレースで初優勝を挙げたばかりか、間に挟んだFIA-F4でも初優勝、そして連勝を飾って、まさに「波に乗る」という印象の強い、菅波冬悟がまたしてもポールポジションを獲得する。「自分でも今、リズムよく調子よく行けているというのを感じていて、マシン的にもすごくいい状態にあるから、相乗効果でいいところを走れているんだと思います」と菅波。
2番手は坪井翔が獲得し、3度目のタイトルに王手をかけている谷口信輝が3番手。逆転の可能性を残す織戸学と佐々木雅弘は13番手、15番手に留まったことから、かなり谷口にタイトルが近づいてきた格好だ。「チャンピオンに、本当にいよいよ王手かけたかな、って思いますね。なんとか踏ん張って表彰台を獲りたいと思うし、何よりチャンピオンは絶対に撮りたいと思います」と谷口。
決勝では菅波に、ただひとり着いていけた坪井ながら、それも1周目だけ。周回を重ねるごと徐々に離されていったばかりかスタート違反があって、坪井はドライビングスルーペナルティを課せられて大きく順を落としてしまう。そこからの菅波には誰も近づけず、見事ラスト2戦の連勝を飾ることとなった。「終わりを優勝で締めくくれて良かったです。連勝ということでさらに良かったなぁ、と。坪井選手がガンガンきていたので、ちょっとタイヤを使ってしまったから、もうちょっと行きたかったんですけどね」と菅波。
最後まで激しく繰り広げられたのが、小河諒と近藤翼、そして谷口による2番手争いだ。スルスルっとスタートで谷口の前に出た、ふたりはチームメイト同士で、互いに手の内を知り尽くしているだけにバトルは壮絶を極め、さすがの谷口も手を挟めず。そのままの順位を最後まで保ったことで、谷口のチャンピオンが決定した。「表彰台に立ちたかったけど、それより大事なことが僕の中にはあったので。今年はいろんなことがありましたが、いちばん欲しかったチャンピオンが獲れて、今すごくホッとしています」と谷口。それはきっと本音のはず。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。