今年のレースも、今回を含めてあと三つとなりました。富士チャン最終戦は、なんと土曜日だけの1デイイベント! そういうのも、なかなか珍しいもんです。空気は冷たいのに、日差しがとても穏やかで、しばらく外にいなければいい感じのお天気でした。
6クラス混走レースは、今回Wヘッダー開催。程よく冷えた路面に、澄んだ空気がレコードブレイクに最適な条件となり、予選では3クラスでコースレコードが更新される。特にNA1600は2007年以来となるから、実に12年ぶり。大石重之が「ガス欠症状に最後、なっちゃったので、もう少し出そうでしたが」と語るもポールポジションを獲得。そして、シルビアで山崎浩明が、そしてロードスターN1で村上博幸が新たなレコードホルダーとなった。
決勝ではスタートでこそ高橋賢一の先行を許した大石だったが、ダンロップコーナーでトップを奪い返すと、セクター3だけで3秒のリードを稼ぎ、その後は後続をまったく寄せつけず。「遠慮なく、思いっきり行かせてもらいました」と大石続く総合2位はシルビアの山崎が獲得。3位は同じシルビアの大山雅樹だった。AE111では上位を走る車両にトラブルが相次ぎ、予選3番手だった内田恒雄が優勝を飾った。MR2は谷田伸行が、AE86は山口崇がそれぞれ優勝。
そしてロードスターN1は村上が逃げ切りを許されず、大野俊哉と雨宮恵司との三つ巴の戦いを繰り広げた。3周目には大野を、4周目と5周目には雨宮に先行されたが、その後はしっかり守って村上が2連勝。雨宮が2位でNDロードスター勢が上位を独占した。
「今までマシンにトラブルが続いていて、やっと普通に走ることができました」と語る勝亦勇雅が初めてのポールポジションを獲得。チャンピオンに王手をかけた一條拳吾が、これに続いた。決勝では勝亦が好スタートを切ったのに対し、一条はやや出遅れ、松本武士や松田秀士の先行を許してしまう。3周目には2番手に返り咲いたものの、その時すでに勝亦は2秒先。なかなか差を詰められず、もはやこれまでかと思われたものの、勝亦がラスト3周で突然失速。「リヤタイヤが苦しくなって」しまい、一條が一気に迫る。しかし、ガードをしっかり固めた勝亦が逃げ切って、嬉しい初優勝を飾ることとなった。3位は松田が獲得。
コンパクトカーによる5クラス混走レースは、N1400の高橋ノボルがポールポジションを獲得。チャンピオンを争い合う大竹直が6番手に甘んじたこともあり、悲願の王座獲得に有利となったかに思われた。決勝でスタートを決めた高橋は、そのままトップを走るが、誤算だったのは大竹がわずか1周で4番手に浮上し、トップグループの一番後ろについたことだった。3周目には3番手に、そして4周目には2番手に上がった勢いで大竹は高橋をかわして、ついにトップに躍り出る。勝った方がチャンピオンという状況において、最後のストレート勝負でコンマ1秒差で逃げ切ったのは大竹。見事3連覇に成功した。
アウディA1ファンカップは、ここまで3連勝でチャンピオンをすでに獲得している、イシカワヨシオが4番手に甘んじる中、ポールを奪ったのは藤井優紀。スタートを決めたイシカワはオープニングラップこそトップに立ったが、次の周には藤井に逆転され、その後に抜き替えせず。藤井はデビューウィン達成となった。
やはり3連勝でチャンピオンが立河元基に決まっているN1000ながら、その立河が練習中のクラッシュでマシンをチェンジ。勝手の違った車両では予選5番手から2位まで上がるのがやっとだった。そのお株を奪ったかのような展開を、前田貴行が見せたが、逃げる最中に違うクラスの車両のスピンに巻き込まれ、リタイアを喫してしまう。これで優勝を飾ったのは赤堀康裕で、1年ぶりの勝利となった。N1500では西山隆が、デミオは常盤岳史が優勝。
第4戦のグリッドは、第3戦のベストタイム順に決まり、圧倒的な速さを見せていた大石重之が連続ポールに。決勝でも逃げ続けたものの、なんと4周目に痛恨のスピンが……。これでシルビアの山崎浩明が逆転に成功。「総合優勝は初めてです。狙っていたんですが、諦めずにいて良かったです」と、劇的な展開に大喜びの様子だった。もちろんチャンピオンも獲得。一方、大石はNA1600で4連勝とし、チャンピオンを奪ったものの、その表情は悔しさに満ちていた。
AE111、AE86、MR2は、ともに内田恒雄と山口崇、谷田伸行が2連勝。山口と谷田はチャンピオンを獲得したが、AE111は未勝利ながら塩岡雅敏がチャンピオンに。
そして、またしても激戦となったロードスターN1は、今度は雨宮恵司と村上博幸の一騎討ちに。しかし、シルビアの山崎に周回遅れとされたことで「予定が狂った」と村上。雨宮の逃げ切りなったことで、チャンピオンはあと一歩のところで逃してしまったからだ。雨宮は「5、6年ぶりの返り咲き」に成功した。
第9戦は、第8戦トップ6のリバースグリッドに。ポールからスタートした飯塚一成を1コーナーでかわしたのは後藤比東至だったが、コカコーラコーナーで一條拳吾がトップに浮上。そのまま食らいついて離れなかった後藤だったものの、スタート違反のペナルティでドライビングスルーを課せられて万事休す。これで一気に楽になった一條が、2番手に浮上した勝亦優雅を寄せつけず、逃げ切りを果たすとともに2連覇を達成することとなった。「去年は勝って決められなかったので、今年はチャンピオンらしい走りをお世話になった方々の前で見せられて決められて良かったです。安定した走りだったとチームからお褒めの言葉もいただけたし、最高のシーズンでした」と一條。3位は2戦連続で松田秀士が獲得した。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。