令和元年最後のレースは、富士が舞台のヴィッツと86/BRZによる6時間耐久です。さすがに1シーズン、ぶっ飛ばしてきたもんで疲れましたね。レース終わった後、普段だったら原稿書くなりして、渋滞を避けられるよう時間を置いて帰るんですが、今回ばかりは「早く帰らないとやばい」と思いましたもの。幸い、選んだルートが大正解。ほぼ渋滞なく帰れて、夕べなんか12時間寝ちゃった(笑)。これから自分をどうオーバーホールしていくか考え中です。
ちなみに今年最後のレースなんで、かなり本気で書きました。ちょっと長いですけど。
2名から4名のドライバーによって競われる6時間耐久レースは、給油がJoy耐方式。いわゆるスタート時はガソリン満タンで、パドック内のガソリンスタンドで給油するというもの。1回に可能な給油量は86/BRZが25ℓ、ヴィッツが20ℓながら、回数の制限はなし。給油時のピット滞在時間は7分以上とされた。
予選は登録されたAドライバーのみ走行し、ポールポジションを獲得したのは、86/BRZクラブマンOPENで表彰台に上った経験を持つ、岡田整がアタックを担当したAGICA MAX P2仲間達86が獲得。2分6秒736をマークしたのに対し、優勝候補の1台とされた、近藤翼の神奈川トヨタ☆DTEC86Rは53秒664! トラブル発生かと思われたが、「この予選は予選関係ないんで」とチーム監督。どうやら完全にタイヤ、ガソリンの温存に討って出たようだ。
「うちはエンタメ系なんで(笑)。まぁ、初心者の集まりみたいなもんなんで、どこまでいけるか楽しめるか。ただ織戸(学)社長からは『予選は行ってこい』と。『じゃあ燃費関係ないですね』って(笑)。まわりも行っていないし、そんな納得のタイムじゃないんですが、一番前から出られるので、絵的には最高かな」と岡田。
ヴィッツクラスのトップは、水谷大介がアタックを担当したGR Tokyo Vitzが獲得。「大人気なくポール獲っちゃって怒られました(笑)。でも、富士では86/BRZレースとも併せ、3階目のポール。なんか縁ありますね。耐久レースは4年ぶりでデータがないので、楽しんでいこうと思っています」と水谷。
レースはAGICA MAX P2仲間達86のリードから開始されるも、予選4番手から順位をじわりじわりと上げてきた、NETZ富山Racing 86の松井孝允が13周目からトップに。直後にSCが入り、その間に最初のドライバー交代を行い、そのままトップをキープ。そして、1時間経過とほぼタイミングを同じくして、神奈川トヨタ☆DTEC86Rが2番手に浮上する。
最初の給油はNETZ富山Racing 86が42周目に行い、次の周に神奈川トヨタ☆DTEC86Rが。しかし、コースに戻ると差が大きく広がっていた。その理由は「サスペンションに緩みがあって、締め直していたら1分ぐらいロスっちゃったため」と小河諒。その遅れを取り戻すべく、近藤、藤波清斗ともどもハイピッチでの周回を重ねていく。
しかし、NETZ富山Racing 86も松井孝允、松井宏太、小原侑己の強豪トリオで、しかも昨年のウィナー。神奈川トヨタ☆DTEC86Rは差を縮めこそするが、プレッシャーをかける位置にまでつけることを許されず。そんな中、5時間を間もなく経過しようという頃、神奈川トヨタ☆DTEC86Rに、2秒間のペナルティストップの指示が! ピット滞在時間がわずかに短かったのだ。やむなく113周目にピットイン。これで逆転は致命的かと思われた。
ほぼ1分の差は、しかし一気に10秒を切るまでとなる。2度目のSC導入が理由だが、間に8台しか挟んでいなかったためだ。クライマックスのドラマが一気に盛り上がり、140周目には差が1秒を切る。と同時に、NETZ富山Racingにもペナルティが! 黄旗区間での追い越しがあり、10秒間のストップを命じられる。「僕のミスです。少し(抜くのが)早かったかな、と思っていましたが……」と松井孝允はレース後に肩を落とす。ゴールまで、あと5周でトップ陥落。これで神奈川トヨタ☆DTEC86Rが待望のトップに躍り出るも、最後に一波乱も。
2番手に14秒もの差をつけ、ファイナルラップに突入するも、セクター2で一気にペースダウン。それを知ったダンロップSYMS楡クリBRZの番場琢がペースを上げて、神奈川トヨタ☆DTEC86Rに迫ったものの、あと3秒及ばず。辛くも逃げ切り成功!
「いろいろありすぎました。今年はすごくラッキーで、NETZ富山さんと楽しいバトルができました。本当は最後までバトルしたかったんですけど……。優勝できて良かったです。チームが喜んでくれました」(近藤翼)
「NETZ富山さんに今年は絶対勝つぞ、って準備してきたんですが、僕らのチームにもトラブルがあって、最後はペナルティで順位が決まってしまったのは残念でしたけれども。ペナルティの2秒は、僕が早く出ちゃったんじゃなくて、翼くんがタイマーのスイッチを押すのが早かったからです(笑)」(小河諒)
「チームがいいクルマを作ってくれて、今年が僕、初参戦なんですけど、いいチームメイトに助けられて、すごい勉強になりました。今年出た、富士の耐久はGT、S耐、これと全部勝っているんですよ!」(藤波清斗)
一方、ヴィッツクラスは序盤こそトップが目まぐるしく入れ替わったものの、中盤からはN中京GRガレージ小牧Vitzの橋本達宏/今井孝組と、N中部GRGミッドレスVitzの神谷裕幸/堀内秀也組による、一騎討ちの様相を呈することになる。
ところが、終盤になってこの戦いに割って入ったのが、GR Tokyo Vitzだった。ライバルより1回給油を減らし、残り1時間でトップに躍り出る。果たして燃料は最後まで保ってくれるのか。1分以上あったリードは、あっという間に詰まって、ゴールまであと6周というところでトップから陥落。最終ラップは3分31秒台という、もはや止まるようなスピードだったが、なんとかチェッカーを受けて4位でゴール。
もちろんトップに立ったのは、N中京GRガレージ小牧Vitz。N中部GRGミッドレスVitzとは5秒差ながらも逃げ切って優勝を果たすこととなった。
「すごく後ろから追いついてきたので、ビビりながらも全力で走りました。3連覇できて、本当に嬉しいです。5年前から参加させてもらって少しずつ順位を上げて、今3連覇できているので、次も4連覇目指して頑張ります!」(橋本達宏)
「最高ですね、やっぱり。神谷くんに勝ったというのが最高ですね! 始まる前から最後の1時間まで仲良くしようね、って言っていて、そういう展開になって最後の最後に勝てたので、最高です」(今井孝)
そして昨年から設けられたヴィッツCVTクラスは、終始IDI・白黒自動変速Vitzがトップを快走。圧倒的な強さを見せつけた。
「SCのタイミングも良く、ずっとトップで走れました。僕以外のメンバーが良かったです(笑)。みんなのチームワークで獲った勝利です」(浅沼直太郎)
「特に無理せず、ゆっくり淡々と。次にヤリスカップになる時、CVT買おうと思いました。いいですね、よくできたクルマです。今日、下の息子の誕生日で、お祝いができました」(飯田裕)
「CVTには昨日初めて乗りました。レースコントロールはバッチリでした!」(たねぞう)
「表彰台の真ん中は、これ以上ないほど気持ちよかったです。しかも主人と上がれることなんて、二度とないかもしれないので。みんなで組んで出た耐久は初めてなので、すごくいい経験ができました」(種田美帆)
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。