あれ〜、このへんは降らないって、昨日の天気予報で言っていたんじゃなかったっけ? 未明から早朝にかけて、かなり本格的に降ったみたいで、予選は完全なウェットコンディション。決勝も最初のフォーミュラ2レースは霧雨が舞ったりしたんですが、その後は完全に雨もやんで、後半のツーリングカーはドライコンディションでの争いとなりました。ま、いいか。
チャンピオンの岩澤優吾、2位の伊藤黎明が卒業を果たしたからには、3位で継続参戦の新倉涼介が気を吐くかと思われ、実際に予選では終了間際までトップ。だが、最後の最後に逆転を果たしたのは鈴木千勝で、初めてのポールポジションを獲得することとなった。2番手の新倉に続いたのはルーキーの松澤亮佑で、筑波シリーズから活動の舞台を移した杉本涼が4番手となった。
予選同様、ウェットコンディションでの戦いとなった決勝は、スタート直後の順位変動はなく、鈴木がホールショットに成功。しかし、上位4台は少しも離れることなく続いていく。3周目の5コーナーで杉本が、まずは3番手に浮上。続いて新倉にも杉本が迫っていく間に、ややリードを広げた鈴木だったものの、6周目に杉本が2番手に上がると差は徐々に詰まっていく。8周目には完全にテール・トゥ・ノーズ状態となり、ヘアピンで杉本がトップに。逆に鈴木はタイヤのピークが過ぎてしまったのか、そのあと新倉、松澤にもかわされてしまう。
「筑波で表彰台に上がったことはありますが、優勝は初めて。いいもんですね。ゴールした後は思わずうるっと来ちゃいました。こういう思いをまたしたいですね!」と杉本。
植田正幸の代役として、急きょ出場が決まった太田達也がポールポジションを獲得。「昨日言われて、練習も1本しかしていないんです」と語るも、2番手の金井亮忠を3秒も引き離す。決勝でもオープニングの1周だけで2秒近いリードを奪うも、4周目あたりから家内のラップタイムが優るように。じわりじわりと金井は差を詰め、終盤には完全にテール・トゥ・ノーズでの戦いに改まっていく。
いつでも抜いてやるぞ、と言わんばかりの勢いで迫った金井だが、太田もしっかりガードを固めて逆転を許さず。最後はコンマ3秒差で逃げ切りを果たすことに。「厳しかったですね! タイヤもつらかったけど、あまりにウェット寄りのセットにしたもので。それとシフトミスも何度かありました」と太田が言えば、「何度かミスしていたようですが、それでも抜けませんでした」と金井は悔しそうに語っていた。3位は中島功が獲得した。
初めてのポールポジションを木下将太郎が獲得。ひとり2分53秒台に乗せ、2番手の川福健太をコンマ9秒も引き離した。雨はやんでいたものの、依然として濡れた路面での争いとなった決勝は、スタートで予選3番手の塚原和臣が川福をかわして2番手に浮上。そのまま木下が逃げていくかと思われたが、S字で転倒車両があって、2周にわたってSCが導入される。
3周目に切られたリスタートは、木下が完璧に決めてトップを誰にも譲らず。その後は今度こそ徐々に木下が差を広げていって、最後は2秒4差での圧勝に。「初ポール、初表彰台で、初優勝です。とてもいいクルマに仕上げてくれたチームのおかげです」と木下。3位は川福で、最後の直線でOYAJIに並ばれたものの、ぎりぎり逃げ切りを果たすことになった。
VITAでは初めてのポールポジションを、佐藤考洋が獲得。「他のレースではポールスタートの経験もあるので、落ち着いて切れたら……」と予選の後に語っていた。実際のスタートもそつなく決めてトップでレースを開始したものの、なんと最終のビクトリーコーナーでスピン! これでトップに躍り出たのは予選4番手のイノウエケイイチだった。スタートで1台、5コーナーで1台を抜いて、間もなく佐藤にも迫ろうとしていたが、労せずして得た格好だ。そのまま逃げようとしたイノウエながら、徐々に迫ってきたのが相馬充寿だった。こちらもコンマ5秒差まで近づいたが、オルタネーターにトラブルが発生して万事休す。
そこからはイノウエのひとり舞台。難なく逃げ切りを果たし、2年ぶりの優勝を飾る。「相馬さんが近づいてきた時は、さすがにやばいかなと思ったけれど、いなくなってくれてからは楽でした」とイノウエ。2位は予選5番手だったチャンピオン茂木祐一が獲得するも、「予選が雨じゃなかったらね」と、こちらは悔しそう。3位はもてぎ初レースの大友敦仁だった。
2018年のチャンピオン、関直之が昨年の最終戦に続いてスポットで参戦。タイムにはやや不満が残ったようだが、ポールポジションを獲得する。2番手には福田裕平がつけていた。限りなくドライコンディションとなった決勝では、後続にアクシデントが相次いだことから、1周だけで5秒もの差を関が奪う。一方、予選5番手から一気に順位を上げていたのは、鈴鹿から最終戦に続いて遠征の林大輔。しかし、福田がピタリと食らいついて離れない。
3周目からは「抑えましたね。後ろでいろいろあって差が開いていたもので」と語りながらも関は9秒差での圧勝に。貫禄のスピードを見せつけていた。そして林と福田のバトルは最後まで続いたものの、順位が入れ替わることはなかった。
鈴鹿・岡山シリーズを3年連続で制しているHIROBONが、今年はもてぎ・菅生シリーズに活動の場を移すことに。レコード狙いで挑んだ予選だったが、なんと6番手に……。「タイヤがねぇ。雨だと僕、持ってないタイヤが速いんですよ」と嘆く。ポールポジションを奪ったのは、久々のスプリントレースとなるS耐ドライバーの相原誠司郎。「去年もスポットで出たら、思いっきりやられてしまったので、悔しくてリベンジに来ました」と、ここまでは大成功。
すっかりドライコンディションに転じた決勝では、相原がホールショットを決め、予選3番手の松尾充晃が2番手に。そして、3番手に浮上していたのがHIROBONだった。4周目の3コーナーで2番手に上がったHIROBONは、続いて相原にも迫って7周目にはトップに躍り出る。だが、その時すでにHIROBONのタイヤは「前半の追い上げで使い切ってしまった」と、そのまま逃げ切りを許されず。最後の力を振り絞った相原がラスト2周の90度コーナーで再逆転を果たし、「どこかでまたチャンスが訪れるだろうと、信じて走りました。今後も出られるものなら出たいですね」と相原。3位は松尾が獲得した。
モータースポーツジャーナリスト。大学在籍時からモータースポーツ雑誌編集部に加わり、90年からフリーランスに転身。以来、国内レースを精力的に取材。本当に力を入れたいのは、非メジャー系レース。特にエントリーフォーミュラのスーパーFJに関しては右に出る者はいないが、並ぼうとする者もいないのが悩みの種?スーパーGT(主にGT300)とスーパー耐久は全戦取材を予定。6月14日生まれ、東京都出身。